だが、「尹氏の言葉は額面通りには受け取れない」──そう語るのは、コリア・レポート編集長の辺真一氏だ。
「歴代の多くの韓国大統領が当選後に『対日未来志向』を口にしてきました。しかし大統領に就任してからは、政権支持率を上げるために、日本に対して厳しい姿勢に転じることを繰り返してきた」
歴史を振り返ると、韓国の歴代大統領の「反日転向」は数多い。初の文民政権として1993年に就任した金泳三大統領は、就任時に慰安婦問題について「日本政府には物質的補償を要求しない」と表明したが、やがて反日世論を意識するようになり、竹島に埠頭を建設するなどの政策を実行した。
続く金大中大統領は、小渕首相と日韓パートナーシップ宣言を締結したが、2001年に日本の中学歴史教科書について、「35項目の記述修正」を要求し、外交問題に発展した。
最も急旋回したのは、2008年に就任した李明博大統領だった。
「大阪生まれで日本語がペラペラだった李氏は親日と目され、就任時には日本と経済重視の関係性を築くと約束していました。しかし、慰安婦問題で弱腰とバッシングされて対日方針を転向しました。2012年8月には韓国の大統領として初めて竹島に上陸し、『(天皇が)韓国を訪問したければ、心から謝るのがいい』と発言して日韓関係は悪化の一途を辿った」(辺氏)
親日の保守派と期待されて2013年2月に就任した朴槿恵大統領も、1か月後には、「加害者と被害者という歴史的な立場は千年の歴史が流れても変わらない」と述べて日本を断罪した。
韓国の変わり身の早さには、かつて岸田文雄首相も煮え湯を飲まされた。元朝日新聞社ソウル特派員の前川惠司氏が語る。
「岸田首相は外相時代の2015年、朴槿恵政権と慰安婦問題の『最終的かつ不可逆的な解決』を確認した日韓合意を締結した張本人です。文政権によって国と国との合意を反故にされた苦い経験を持っています。韓日関係の改善をどう図るのかは難しいところでしょう」
※週刊ポスト2022年4月1日号