その2次募集も落ちたとされる。
「2次募集でも甘く見てはいけません。事情があって高校の決まらなかった優秀な生徒をすくい上げるため、あえて前後期分割による後期募集を実施している高校もあります。そういった高校の中には一般入試(1次)より難しくなる高校もあります。ですから内申点が著しく低い場合、まして2次募集では『とにかく受かるところ』を選ぶのが普通です。2次募集でも50人以上の枠を設けている高校とかですね。都立ですと都心の品川区や大田区、世田谷区にもそうした全日制普通科の高校があります。倍率だけ見れば不人気ですが一等地にありますし交通も便利です。地方に比べれば東京都は選択肢の多い私立はもちろん、公立受験も恵まれているのです」
何度も受験の機会がある。本当に東京の子は恵まれている
2022年の都立2次募集は71校で実施(島しょ除く全日制普通科は32校)、都立田園調布が2.30倍を記録した。元々の後期枠だが、運悪く決まらなかった中堅層が集中した結果だ。しかし室長の言う通り都心の都立高校でも倍率1倍を切るどころか、世田谷区の都立高校すら倍率が0.18倍という高校もある。そもそも32校中の23校は2次募集でも定員割れとなっている。全日制普通科でこれだ。都立の商業・工業高校ともなると2次募集21校中、定員割れが19校。都民の私立志向、普通科志向に加えて少子化に合わせた都立の統廃合が進んでいないという事情もあるが、選択肢も少なく「公立落ち即すべり止め私立」という地方の生徒、とくに上位中堅層でもない公立志向の生徒や親御さんにとっては羨ましい話かもしれない。
「都立回帰とはいっても上位校や中高一貫校の話で、東京は基本的に私立優位ですからね。そもそも富裕層はもちろん中流家庭でも高校受験を避ける傾向にあります。幼稚園、小学校、遅くとも中学受験でエスカレーター式の有名校に入ります。それに私立高校の授業料が(実質的に)無償化されたので、以前は都立に行くような中堅下位の子も、偏差値は低くても施設が整っていたりスポーツで有名だったりする私立高校を受けるようになりました」
さらに東京都の受験生は恵まれていて、都立は3次募集まであり、選ばなければ都心の都立でも全入状態である。言い方が難く普通の受験生やその親御さんには縁のない話かもしれないが、東京都は公立の全日制普通科に行きたい子は3次募集の救済で絶対に行けるようにしている、と言ってもいい(著しくやむをえない事情がある場合は除く)。
「2021年は都立51校(全日制)が3次募集をしました。はっきりいって、3次募集は受ければ全員受かります。実際にその2021年の3次募集は受験した子が全員、受かっています。まず落としません」
この取材の後、3月16日に2022年の都立高校3次募集が発表された。2次でも定員の埋まらなかった都立が主で、区内の全日制普通科だけでも14校333人の枠が設けられた。都下と実業系の都立を合わせれば区市町で定員枠は1278人にも及ぶ(すべて延べ学校数・人数)。例年の「ほぼ全入」状態を考えれば、普通に受験して落ちることはないだろう。
「救済措置みたいなものですからね。何度も受験の機会があって、選ばなければ誰でも公立高校の全日制普通科に行ける、本当に東京の子は恵まれているのですよ」
それでも大維志さんは6回の受験で不合格、都立の3次募集を受けるべきだと思うが、受けなくとも高等学校卒業程度認定試験(いわゆる「高認」)という道もあるし、東京はそのためのサポート校も充実している。