ロシア国内でも反プーチンの声はあるものの…(写真/共同通信社)

ロシア国内の反プーチン派の人々(写真/共同通信社)

プロバガンダでプーチン支持者の信念を強固に

 説明を受けたソフィアさんが、「そのようなニュースを注意して見ていなかったことが分かりました。これからは全て確かめます」とテレビ目線で答える姿は、「それが正しい」と視聴者にダメ押ししているようでもあった。

 プーチン支持者にとってこうした動画は説得力があるだろう。すでに動画で流れているような内容を強く信じ込んでいるような人々だからだ。心理学者のウィリアム・フォン・ヒッぺル氏は、著書『われわれはなぜ嘘つきで自信過剰でお人好しなのか 進化心理学で読み解く、人類の驚くべき戦略』(ハーパーコリンズ・ジャパン)で、2016年の米大統領選挙でのトランプ支持者を例に上げ、「フェイクニュースは有権者の二極化を深めた可能性がある」と書いている。フェイクニュースは、「敵対する正当の“悪事”への怒りを共有することによって、集団の仲間たちの結束はより固まった」と言うのだ。

 フェイクを信じる人々は、それが偽情報だと伝えても主張を変えることはない。嘘を信じるなと説得されればされるほど、その嘘を信じ込む。番組では、ロシアと他国に別々に住む親子や家族の間で、ウクライナ侵攻への認識がまったく異なり、溝ができたり喧嘩になったりするケースが紹介され始めた。フェイクニュースを鵜呑みにするプーチン支持派と反戦を叫ぶ人々が二極化し、フェイクを目にするごとに人々の分断はより深まっているようだ。

 ヒッペル氏は著書の中で、「フェイクニュースによって人々の政治思想が変わるのは稀だ」とも書いている。ロシアが行っているプロパガンダは、反戦や反プーチンを叫ぶ人々の考えを変えようとしているのではなく、プーチン支持者の信念をより強固にするためのものだろう。

 プーチン大統領が4日、ロシア当局が偽情報と見なせば、禁錮刑に科すことができる法案に署名したことで、ロシアの情報統制は厳しさを増している。『プロパガンダ 広告・政治宣伝のからくりを見抜く』
(誠信書房)で社会心理学者のエリオット・アロンソン氏らは、“カルト教祖になる方法”の第一歩としてこう述べている。

「あなた独自の社会的真実を作りなさい」

爆撃を受けた小児病院(写真/AFLO)

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