国際情報

ウクライナの善戦を支える「サイバー戦」立役者・31歳副首相の手腕

ミハイロ・フョードロフ副首相兼デジタル転換相(GettyImages)

ミハイロ・フョードロフ副首相兼デジタル転換相(Getty Images)

 ロシアによるウクライナ侵攻は、ウクライナ軍による必死の抵抗が続いている。一方、SNSを中心とした情報戦においては、ウクライナがロシアを圧倒しており、KGB出身のプーチン大統領は思わぬ苦戦に焦っているようだ。それを指揮するのが、ミハイロ・フョードロフ副首相兼デジタル転換相(31)。台湾のデジタル担当大臣に35歳という若さで就任して話題となったオードリー・タン氏になぞらえて“ウクライナのオードリー・タン”とも評されるフョードロフ氏について、国際ジャーナリストの山田敏弘氏が解説する(文中一部敬称略)。

 * * *
 ロシアのウクライナ侵攻が始まって20日以上になる。戦闘はまだ続いており、ここからどのような形でこの戦争が終焉するのかはわからない。

 ただ、はっきりしていることは、この戦争が本格的にSNSで情報戦が繰り広げられた戦いとして記憶されることになるということだ。さまざまな情報が、SNSを使って世界に発信され、戦況にも影響を及ぼしている。

 ウクライナ政府でSNSを使った情報戦を率いるのは、フョードロフ副首相兼デジタル転換相である。戦闘のための武器ではなくSNSで戦った政府首脳として、フョードロフの名も語り継がれていくはずだ。

 まずフョードロフの存在が広く知られるようになったのは、ロシアによるウクライナ侵攻が開始されてから数日後の、2月27日のことだ。フョードロフはこんなツイートを投稿した。

「われわれはIT軍を立ち上げる。デジタル才能が必要だ」

 そこからフョードロフのオンライン上での戦いが始まった。ウクライナのサイバー民兵たちを率いてサイバー攻撃を指揮すると同時に、世界の著名人に直接SNSでメッセージを送る。

 例えば、イーロン・マスクだ。テスラの創業者でもあるマスクは、現在、スターリンクと呼ばれる世界の至る所で高速インターネット接続を可能にする衛星ネットワークシステムを立ち上げている。このスターリンクを使うことで、ウクライナで使われている従来のインターネット網がロシアによって破壊されても、ウクライナでインターネットを継続して利用でき、コミュニケーションも遮断される心配はない。

 プーチン大統領が侵攻後すぐに計画していた作戦として、ウクライナ国内のコミュニケーションシステムの破壊、というものがあったと報告されているが、それを踏まえて、フョードロフはマスクにツイッターで「ウクライナにスターリンクを送ってください」と直談判した。

 するとマスクがそれに反応。「スターリンクのサービスをウクライナでスタートさせた。通信機器を送る」──そして48時間以内に、フョードロフは実際にウクライナに到着した数多くのスターリンクを写真で公開した。とんでもない時代である。

関連キーワード

関連記事

トピックス

《悠仁さま成年式》雅子さまが魅せたオールホワイトコーデ、 夜はゴールドのセットアップ 愛子さまは可愛らしいペールピンクをチョイス
《悠仁さま成年式》雅子さまが魅せたオールホワイトコーデ、 夜はゴールドのセットアップ 愛子さまは可愛らしいペールピンクをチョイス
NEWSポストセブン
LUNA SEA・真矢
と元モー娘。・石黒彩(Instagramより)
《80歳になる金婚式までがんばってほしい》脳腫瘍公表のLUNA SEA・真矢へ愛妻・元モー娘。石黒彩の願い「妻へのプレゼントにウェディングドレスで銀婚式」
NEWSポストセブン
昨年10月の総裁選で石破首相と一騎打ちとなった高市早苗氏(時事通信フォト)
「高市早苗氏という“最後の切り札”を出すか、小泉進次郎氏で“延命”するか…」フィフィ氏が分析する総裁選の“ウラの争点”【石破茂首相が辞任表明】
NEWSポストセブン
万博で身につけた”天然うるし珠イヤリング“(2025年8月23日、撮影/JMPA)
《“佳子さま売れ”のなぜ?》2990円ニット、5500円イヤリング…プチプラで華やかに見せるファッションリーダーぶり
NEWSポストセブン
次の首相の後任はどうなるのか(時事通信フォト)
《自民党総裁有力候補に党内から不安》高市早苗氏は「右過ぎて参政党と連立なんてことも言い出しかねない」、小泉進次郎氏は「中身の薄さはいかんともしがたい」の評
NEWSポストセブン
阪神の中野拓夢(時事通信フォト)
《阪神優勝の立役者》選手会長・中野拓夢を献身的に支える“3歳年上のインスタグラマー妻”が貫く「徹底した配慮」
NEWSポストセブン
9年の濃厚な女優人生を駆け抜けた夏目雅子さん(撮影/田川清美)
《没後40年・夏目雅子さんを偲ぶ》永遠の「原石」として記憶に刻まれた女優 『瀬戸内少年野球団』での天真爛漫さは「技巧では決して表現できない境地」
週刊ポスト
朝比ライオさん
《マルチ2世家族の壮絶な実態》「母は姉の制服を切り刻み…」「包丁を手に『アンタを殺して私も死ぬ』と」京大合格も就職も母の“アップへの成果報告”に利用された
NEWSポストセブン
チームには多くの不安材料が
《大谷翔平のポストシーズンに不安材料》ドジャースで深刻な「セットアッパー&クローザー不足」、大谷をクローザーで起用するプランもあるか
週刊ポスト
ブリトニー・スピアーズ(時事通信フォト)
《ブリトニー・スピアーズの現在》“スケ感がスゴい”レオタード姿を公開…腰をくねらせ胸元をさすって踊る様子に「誰か助けてあげられないか?」とファンが心配 
NEWSポストセブン
政権の命運を握る存在に(時事通信フォト)
《岸田文雄・前首相の奸計》「加藤の乱」から学んだ倒閣運動 石破降ろしの汚れ役は旧安倍派や麻生派にやらせ、自らはキャスティングボートを握った
週刊ポスト
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《不倫報道で沈黙続ける北島康介》元ボーカル妻が過ごす「いつも通りの日常」SNSで垣間見えた“現在の夫婦関係”
NEWSポストセブン