──昔からの王道の素晴らしさを踏まえた先に、ああした殺陣があったわけですね。
中川:昔からずっと受け継がれてきたことは重要なんです。立ち回りというのは刀と人だけでの表現なのですが、それだけで表現できることって限られていると思います。
それと、これは僕の性格なのですが、ただ「戦って勝つ」というのではなくて、「どうして勝ったか」が見えないと面白くない。「ただ強いから勝った」では、僕は納得できないんです。
たとえば宮本武蔵が巌流島で日光を背にして佐々木小次郎が「うっ、まぶしい」となったりとか、海に櫂を沈めることによって、櫂の長さが読み切れないとか。そういうことを観ている側にも伝えて「だから、勝てたんだ」と、勝つ側にもそれなりの理由があるよねっていうのがないと、観ていてすっきりしないんじゃないかなというのがあります。
【プロフィール】
中川邦史朗(なかがわ・くにしろう)/1971年生まれ、北海道出身。若駒プロ所属。大河ドラマ『真田丸』、時代劇『陽炎の辻完結篇』、新連続テレビ小説『ちむどんどん』の殺陣指導を担当。
【聞き手・文】
春日太一(かすが・たいち)/1977年生まれ、東京都出身。映画史・時代劇研究家。
撮影/藤岡雅樹
※週刊ポスト2022年4月1日号