減薬の指導を行う昭和大学病院(写真/共同通信社)
また、4つの医療機関を受診していた患者の事例を通して、飲み合わせに注意を促すこともある。
「それぞれの医療機関でいくつかの薬が処方された結果、同じ薬効で重複する薬や、飲み合わせで降圧剤の効果を弱める併用注意の薬が処方されることがあります。このような時は、重複する薬を中止したり、飲み合わせの影響を受けない別の降圧剤に変更することで薬を減らすことができると説明しています」(嶋村氏)
対策チームの取り組みにより、これまで複数の診療科を受診して21種類の薬を処方されていた患者が重複する4種類の胃腸薬の服用をやめて17種類に減薬した。この患者は解熱鎮痛薬などの「副作用」を防ぐ目的で、それぞれの医療機関で胃腸薬が重複して処方されていた。
精神科で3種類の睡眠薬を処方されていた高齢患者の薬を見直した結果、面談を続けて最終的に何とか1種類をやめられたケースがあったという。
院外の保険薬局から「ポリファーマシー検討依頼」を受け付ける取り組みも始めている。
「昭和大学病院が所在する品川区の薬剤師会と連携し、当院の処方で6種類以上の服用薬がある場合は当院の薬剤部に依頼いただき、処方の見直しを検討する仕組みを導入しました」(嶋村氏)
この連携事業では、2021年3月までに60件の依頼があり、そのうち52件が減薬に結びついたという。
「薬を出してくれ!」の声も
先進的な昭和大学病院の減薬の取り組みではあるが、必ずしも順風満帆というわけではない。減薬教室は、コロナ禍に入ってからオンライン開催に切り替えざるを得なくなった。
「食堂での開催時は高齢の患者さんが参加してくれましたが、2020年3月以降にオンライン開催としたところ、WEB手続きのハードルが高いせいか参加申し込みがほぼゼロになってしまいました。教室が休止されてからは、大学病院薬剤部でメールや電話による個別相談に応じています」(嶋村氏)
一方、薬をやめることへの抵抗感が患者側に強く、提案に反発されることもあったという。
「処方医が減薬可能と判断して、それを薬剤師が説明しても、患者さんのなかには『服用し続けたい』という人がいます。『私が出してほしい薬を出してくれないなら、薬はすべていらない』『今は調子が良いんだから減らす必要はないでしょう』などと言われたことも。正直、患者さんに減薬を納得してもらうのは大変なことです。特に高齢者の方は長く服用していることで、その薬に対するこだわりが強いと感じます」(嶋村氏)