野田聖子・男女共同参画担当相にノンフィクションライターの常井健一氏がインタビュー
──どういう意味ですか?
「高市さんは完全に保守だから、そうじゃない男性議員もいっぱいいるわけですよ。その人たちが党内のバランスを取ろうと私の周りに集まった」
──野田さんの推薦人20人中8人は二階派の所属議員でした。二階俊博さんがバックについて今回出馬ができた?
「いや、まったく。勘違いされているけど、二階さんは独裁者ではなく、受け止めるリーダーなんです。来る者は拒まず、去る者は追わずだから、誰かを絶対落としてやろうという発想がない人ですよね。でも、河野さんや高市さんの周りにいた人たちは……。最も熾烈だったのは、その二者の争いだったと思います」
──野田さんの腹心の三原じゅん子さんが総裁選の間に、他陣営からの恫喝や引き剥がしがあることをほのめかしていました。
「彼女はずっと痛い目に遭ってきたのよ。たとえば、『次の選挙の公認を出さない』と言われたりね。私を応援した人は大概意地悪をされていますよ。入閣待機組には『次は大臣だけど、野田をやったらなし』とか、平気で言われるの。いい人だって言われている人ほど、しれっと恫喝しますよ。30年も永田町にいるといろんなものが見えてくる」
──今まで3回も出馬を見送ってきた背景には、そんなことがあったんですか!
「みんなに泣きながらごめんって言われるのがつらくてね。ホントに気の毒なことをしました」
──仮に、「野田聖子」が男だったらなかったことですか?
「関係ないと思うけど、ただ、私が女だから応援しづらい面はありますよ。『あの女を好きなんだろう』みたいに、えげつなくからかわれるから」
──愛人説が流れたり。
「ずっと言われてきました、光栄なことに。一緒にいるだけで愛人にされちゃう。私ってそんなにモテるんだと錯覚するくらい(笑)」
──この連載第1弾(週刊ポスト3月18・25日号)では高市さんも同じような悩みを吐露しました。ふたりは、1993年衆院選の初当選同期ですね。
「初めは政党が違ったな」
──高市さんは新進党などを経ての自民党入りでしたね。おふたりはこの30年間、なにかと比べられました。
「VS高市早苗、VS小池百合子、VS辻元清美、VS佐藤ゆかり……。マスコミではいつも女性とVSにされて、私たちは、またか~って思っていますよね」
──高市さんとの違いは?
「バイオロジカルには同じ女性だけど、極端に違いますよ。たとえば、私は祖父が政治家、彼女はまったく無縁のおうちで、松下政経塾で修業したけど、私はノンポリで、自分は政治家になろうと思ってなかった。お互い離婚も再婚も経験したけど、私は子どもを育てている。彼女はずっと宿舎住まい。私生活と仕事を切り離したい私からすると、宿舎は絶対あり得ないので、民間の賃貸マンションに住んでいる。
見た目は彼女のほうがアクティブに見えるけど、すごく勤勉な人だと思います。お酒もあんまりたしなまない。夜はずっと宿舎にこもって勉強されているイメージ。私は毎晩、いろんな人と飲みに行って、やんちゃだね、秘書が困るくらい。仕事熱心さでは彼女だけど、私にはアンテナがいろいろある」
(第4回につづく)
【プロフィール】
野田聖子(のだ・せいこ)/1960年、福岡県生まれ。上智大学外国語学部比較文化学科卒業後、帝国ホテルに入社。1987年、岐阜県議会議員(当時最年少)に。1993年、衆議院議員に初当選。その後、郵政大臣、総務大臣、女性活躍担当大臣、マイナンバー制度担当大臣、幹事長代行などを歴任。現在は、男女共同参画担当大臣。衆院岐阜1区選出、当選10回。
【インタビュアー・構成】
常井健一(とこい・けんいち)/1979年茨城県生まれ。朝日新聞出版などを経て、フリーに。数々の独占告白を手掛け、粘り強い政界取材に定評がある。『地方選』(角川書店)、『無敗の男』(文藝春秋)など著書多数。政治家の妻や女性議員たちの“生きづらさ”に迫った最新刊『おもちゃ 河井案里との対話』(同前)が好評発売中。
※週刊ポスト2022年4月8・15日号