子供は「大人と一緒に」ニュース視聴を
自分自身は精神的ストレスを感じていなくても、周囲の人が不安や苦痛を抱えてしまっている場合もある。特に育児中の家庭では、子供が精神的不安を抱えていないかどうか、いつも以上に配慮することも必要だ。海原医師は「子供が気持ちをため込まないようにすること」の必要性をこう説く。
「家庭でお子さんが不安な気持ちになっていないか心配な方もいらっしゃるでしょう。子供は自分の気持ちを言葉で表現することができないこともあります。こんな時は一緒に遊んだり身体を動かすなどで気持ちをため込まないようにすることも必要です」
子供の精神的負担を軽減するために大人ができることは何か。八木所長はこう提案する。
「米国退役軍人省では、子供たちに対して、大人は次の点に留意すべきと言われています。まず、子供たちが実際どの程度ニュースを視聴しているか、大人が把握すること。次に報道内容について、大人が解説すること。同じ映像が繰り返し流れている場合は、それが1回の出来事だったと説明するとよいでしょう。
また、文脈の中でニュースを捉えられるよう、説明することも大事です。報道は悪いことに焦点を当てがちですが、たとえば救急隊など良い活動を行っている人に注目することで、日常生活はおおむね安全だと伝えたりすることができます。
さらに、子供たち自身が語れるように促すことも大事です。ニュースで理解できなかったことが恐怖につながっているかもしれないので、わからないことを質問させて、大人がそれに答えて安心させる。多くの人がより良い未来のために頑張っていると伝えてください。
もしくは、子供たちのニュース視聴を制限する。子供たちがニュースを見る場合は、大人が一緒に見るようにしてあげてください。悲惨なニュースを見過ぎている場合は、他のことに取り組むよう促します」
悲惨な現実から目を背けてはならないという意見もあるだろう。だが不安や苦痛をため込みすぎると、現実と向き合うことすらできなくなってしまう。自分や周囲の人の心の状態に配慮し、一刻も早い停戦を祈りつつ、時にはニュースから距離を置くことが必要かもしれない。
◆取材・文/細田成嗣(HEW)