ゼレンスキー大統領や国際人権団体が悲痛な訴え(共同通信社)

ゼレンスキー大統領や国際人権団体が悲痛な訴え(共同通信社)

 さらにロシア軍の統率が取れていないことも原因だという。自衛隊元陸将の福山隆さんが解説する。

「ロシア兵の中には、脱走者や自傷行為をして紛争地に送られないようにする者が多発しているといいます。これは軍隊の風紀や規律が乱れていることを意味します。どの軍隊でも戦場では強い軍紀で縛らなければ、市民に不法行為をする者が出てくるものです。紛争が長期化の様相を呈してきたいま、ロシア兵はストレスフルな状態になっていると考えられます。抑えの利かなくなったロシア兵が、何をやらかしてもおかしくない状況にあるといえます」

ロシア兵は“おとがめなし”

 紛争下における性暴力は「性の捌け口」だけが目的ではなく、捕虜や民間人を屈服させるための“武器”として用いられる場合もある。それは到底、容認されるべきものではない。

 人道に外れた戦争にもルールがある。「国際人道法」と呼ばれるジュネーブ条約などの国際規則では、戦争中であっても攻撃対象は戦闘員や軍事施設に限られ、民間施設や民間人を攻撃してはいけない。民間人の殺人や性暴力、集団処刑などは「人道に対する罪」と呼ばれ、違反すると、戦争犯罪に問われる可能性がある。

 だが、紛争下の戦争犯罪は不処罰となることが多い。しかもロシアは「おとがめなし」に持ち込む“切り札”を握っている。国家間の戦争犯罪は、国際司法裁判所(ICJ)が取り扱う。戦争犯罪と認定されて判決が出れば、その執行は国連安保理が担うことになる。しかし、仮に今回のロシアによる侵攻が戦争犯罪だとの判決が出てもロシアは安保理の常任理事国であるため、自国への制裁案に拒否権を発動して廃案に持ち込むことができるのだ。

 国家同士の紛争を裁くICJに対し、戦争犯罪を行った個人を捜査・起訴する国際刑事裁判所(ICC)と呼ばれる機関がある。だがこの機関は独自の警察機関を持たず、容疑者の逮捕は各国に任されている。ロシアは2016年にICCから脱退しているため、その効力も無に等しい。当然、プーチン氏は他国に容疑者の身柄を引き渡すことはしないだろう。

「ロシア兵の戦争犯罪を処罰することは、現実問題として難しいでしょう。おまけにロシア軍は短期決着を想定していたため、食料や燃料などが不足している状態。今後も、民間人からの略奪や窃盗行為が増えていく可能性もある。彼らを縛るものがない“無法地帯”では、さらなる民間人への被害が懸念されます」(国際ジャーナリスト)

 プーチン氏は、ウクライナ侵攻に対し「親ロ派の人々を救済するため」などと“正義”を振りかざしてきた。しかし、現実は多くの罪のない民間人を傷つけ、殺し続けている。そこに大義はない。絶対に許してはならない。

※女性セブン2022年4月21日号

(時事通信フォト)

ウクライナ軍が奪還した首都キーウ近郊(時事通信フォト)

(時事通信フォト)

ロシア軍の大量虐殺に世界中で怒りの声止まず(時事通信フォト)

元妻・リュドミラさんと2人の娘と撮影した家族写真(AFLO)

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次女のカテリーナ氏(写真/AFLO)

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幼少期の娘を抱くプーチン氏(写真/アフロ)

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少年期のプーチン氏(写真/アフロ)

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