ところが、高市氏の更迭は党内の権力バランスの大きな変化につながりそうだ。“闇将軍”の角栄氏は最後は派内から“クーデター”を起こされて失脚、結束を誇った田中軍団は分裂に追い込まれ、自民党の世代交代を引き起こした。
実は、最大派閥の安倍派内では、安倍氏が派内から総裁候補を立てようとしないことに不満が溜まり、「安倍離れ」が始まっている。
「総裁選出馬を止められた下村さんや稲田さんは安倍さんに対して不信感を拭い切れていないし、側近の萩生田さんも自分の支持層は安倍さんの岩盤保守とは少し違うと考えている。だから福田総務会長を含めて、総裁候補たちは安倍さんに頼らなくてもいいようにそれぞれ個別に勉強会を開くなど自前の勢力拡張を急いでいる。皮肉なことに、安倍さんに一番忠実なのは無派閥で自分の勢力がない高市政調会長ではないか」(前出・安倍派ベテラン)
そんな状況で安倍氏がいまや“唯一の忠臣”である高市氏を見捨てれば、「安倍さんに従っても使い捨てられる」と派内から造反の火の手が上がり、角栄氏の“二の舞い”となる可能性がある。それが岸田政権を支える最大派閥の崩壊へとつながれば、自民党に激震を呼ぶのは間違いない。
※週刊ポスト2022年4月22日号