安倍派への批判も
最大派閥・安倍派(時事通信フォト)
参院選前に露骨な“年金世代へのバラマキ”をやろうとした岸田内閣への痛烈な批判だった。次に伊吹氏は衆院の定数是正(10増10減)に反対を唱える細田博之・現衆院議長に矛先を向けた。
「もっと悩ましいのは、あんまり言っちゃいけないんだけど、細田さんっていう方は、私が幹事長のときの幹事長代行をしていただいて、非常に行き届いた、誠実で政策もよくわかる方だ。(しかし)今回議長になられて、議会が決めた法案を公然と批判したら、これはやっぱり国会の権威は丸つぶれだ」
国会では「1票の格差」を是正するために安倍政権時代の2016年に公選法などを改正。格差を2倍未満にするため、2020年国勢調査に基づいて次の総選挙から衆院の定数を東京都で5増、神奈川県で2増、埼玉・千葉・愛知の各県で1増する一方、宮城・福島・新潟・滋賀・和歌山・岡山・広島・山口・愛媛・長崎の10県で定数をそれぞれ1減する「10増10減」の方針が決まった。
しかし、削減される県が具体的になると、自民党内では地方選出の議員を中心に10増10減に批判が高まっている。とくに定数減となる10県に10人の現職議員(小選挙区当選者)を抱える最大派閥・安倍派で批判が強い。
そこで安倍派前会長でもある細田氏は議長就任前、安倍晋三・元首相の選挙区がある山口県などを定数削減の対象から外す「3増3減」私案(東京3増、新潟、愛媛、長崎を各1減)を提示。議長に就任してからも、「地方を減らして都会を増やすだけが能じゃない」「地方いじめのような、都会だけ増やすようなことは、もうちょっと考えたらどうか」と繰り返し見直しを主張している。まさに“派利派略”だ。
伊吹氏はその細田氏に大上段から正論をぶつけた。
「憲法に法の下の平等がある。投票権が非常に不平等だ。人口が非常に多いところは1票投じても1人の人しか選べないけれども、人口が少ないところで、少ない人口で投票して当選する。だから憲法違反だという訴えがずっとあり、最高裁まで行って違憲状態だとか違憲だとかいろいろ言われた。私が議長のとき、議長のもとで審議会をつくって審議を始めてもらった。
世論を考えると定数を増やすのはなかなか難しい。その中でどうするかっていうことをやり始め、結局時間がかかって大島(理森・前衆院議長)さんのときに結論が出た。これ(定数是正の法律)は国会議員の身分に関することで議長の諮問会議で得た結論だから、当然、議員立法で出した。その筆頭の提案者が細田さんだ。それが自民党と公明党と維新の賛成で通った。それを具体化していかなければいけない時点になったときに、反対だとかどうだとかっていうことが今出てきている。
私は人口だけで議員の定数を決めるっていうのは個人的には反対です。しかしそれを変えるためには憲法を変えないといけない。これから区割り画定審議会が動き出すんだと思いますが、やはりポジションにいる者は言っちゃいけないことがある。私なんか言いたいことはいろいろ言いたい。だけど幹事長のときはこういうこと言っちゃいかんなとか、大臣なのでいけない、議長はいけないなと思って抑えないといけない」