『チェリまほ』には幸せな空気感がある
もうひとつ、二人の同僚・藤崎(佐藤玲)や愛妻家の先輩・浦部(鈴之助)、元魔法使いで情に厚い小説家の安達の親友・柘植(浅香航大)と彼のところに荷物を届ける宅配業者・湊(ゆうたろう)など、周りの人たちもどこかほんわかして、優しいこともこの作品の魅力。もしも、自分の周りに安達や黒沢のような二人がいたら、こんな風に接したいなと思えてくる。
視聴者は、戸惑いや秘めた苦しさに耐えたり、思いが通じて舞い上がったりする恋愛当事者の気持ちに共感もできるし、二人の周囲の人々の優しさにも共鳴できる。いろいろな立場で、幸せな空気に包まれるのである。
映画では安達が、長崎に転勤。互いの仕事を応援しつつも、遠距離になった二人の心情の変化や成長も気になるところだ。安達が作った不格好なオムライスを、「もったいなくて食べられない」黒沢。愛すべき彼らは、またまた笑わせてくれるが、メイキング映像を見ると、ひとつひとつの仕草や言葉の強弱にも気を配り、繊細に表現されているのだとわかる。そうして作られた場面の楽しさ、切なさに感じ入り、安心して身をゆだねる心地よさは、格別。今だから、余計にしみる気がする。赤楚、町田の代表作になったのは間違いない。