死の直前、東京都足立区の民家の庭で尾崎は泥酔し、全裸で倒れていた。彼の死後、ここに花を手向けるファンが後をたたなかった。その後、家主は自宅の一部を開放。2011年に取り壊されるまでの19年間、「尾崎ハウス」と呼ばれ全国からファンが集まった
木暮が参加したのは、アルバムの中でもひときわ明るい楽曲『紙切れとバイブル』。爽快かつポップな曲調で、アルバムタイトルの候補曲だった。
「尾崎はおれに勝手気ままなエネルギーを求めていたのかもしれないね。アルバムタイトルの候補になったってことは、彼の中での自信作だったんだろう。そこにおれのギターを必要としてくれたってことは、いまでもうれしいね」
それから5年もしないうちに、尾崎はこの世を去る。
「当時、おれはアメリカで音楽活動をしていた。ロス暴動が起きて、街には銃声や火の手が上がることもあった。そんな中、尾崎の訃報が入ってきて、呆然としてしまった」
尾崎が破滅的な酒の飲み方をしているのは、かねてから目の当たりにしていたという。
「世間が求めるスターの自分と、本当の自分が違い、引き裂かれるような感覚があったんじゃないかな。おれも、次のヒットを出さなくてはいけない、動員数を増やさなくてはいけないというプレッシャーを感じた経験があるので、その苦しさはわかる」
いま再び、2人で演奏するならどんな曲が生まれていたのか。聴いてみたかった。
【プロフィール】
木暮“shake”武彦(こぐれシャケたけひこ)/1960年生まれ。1984年バンド「レベッカ」でメジャーデビュー。以降、「レッド・ウォーリアーズ」などさまざまなバンドで活動を続けている。最新アルバムは『Birthday Song』(ClearSky)。
取材・文/前川亜紀
※女性セブン2022年5月5日号
尾崎を語る木暮“shake”武彦