国内

「ホームレス平均年齢63歳」調査で浮かび上がる「あえて路上生活を選ぶ人々」の実態

厚生労働省が発表した「ホームレスの実態に関する全国調査の結果」

厚生労働省が発表した「ホームレスの実態に関する全国調査の結果」

 厚労省が4月26日、5年ぶりに「ホームレスの実態に関する全国調査」の結果を発表した。コロナ禍で初の発表となった今回の調査から見えてきた路上生活者の実態とは。東京のドヤ街・山谷地区で路上生活者を取材した介護ジャーナリスト・末並俊司氏が読み解く。

 * * *
 路上生活者の平均年齢が年々上がっている。4月26日に発表された最新調査では、厚生労働省が調査を始めた2003年以降で過去最高の63.6歳となったことがわかった。

 厚労省は概ね5年に1度、路上生活者の実態調査を実施してきた。コロナ禍では初めてとなる今回の調査では、東京23区や政令指定都市などで1169人に面接した。年齢別で最も多い層は70歳以上の34.4%だ。次いで65?69歳の20.0%。高齢になるほどその割合が増える傾向にあることがわかる。

 筆者が特に注目したい調査項目は、「路上生活の期間」だ。10年以上が40.0%で前回から5.4ポイント増加し過去最高を記録。5年以上を合わせると6割近くに上る。いったん路上生活に陥ると、なかなか抜け出せない。そんな実情が明らかになった。

 筆者は2010年から路上生活者が多く住む東京都の山谷地区を取材し、著書『マイホーム山谷』にまとめた。その経験を元に、数字だけでは見えてこない、路上生活者の実態を報告する。

 不況の煽りを受けて仕事が減り家賃が払えなくなった。病気やケガで仕事が続けられなくなった。会社が倒産し失業した──。路上生活に至る理由は様々だ。生活保護を受けてアパートに入るケースもあるが、その方法を選ばない人も多い。

 東京都台東区の東京都立上野恩賜公園(通称:上野公園)で出会った70代の路上生活者・Aさんはこう語ってくれた。

「数年前にさ、ある団体の紹介で福祉(生活保護のこと)の世話になったんだけど、もう二度と嫌だな。千葉の奥の方まで連れて行かれて散々な目にあった」
 
 健康で文化的な最低限度の生活を送るために使われる生活保護制度だが、長年路上生活をしてきた人の場合、一般のアパートなどに入る前に「中間施設」と呼ばれる場所になかば強制的に入れられるケースがある。そうした場所で家賃を払う生活に慣れてもらってからアパートがあてがわれるのだ。

 中間施設は行政が民間業者に委託するかたちで運営されている。中には悪徳と言われても仕方ない業者もあり、劣悪な環境の大部屋に利用者を押し込み、生活保護費を巻き上げるといったことが実際に行われている。前出のAさんは「ノミやシラミがうようよするような部屋に入れられた」と吐き捨てるように語った。

関連記事

トピックス

「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/小倉雄一郎)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(容疑者の高校時代の卒業アルバム/容疑者の自宅)
「軍歌や歌謡曲を大声で歌っていた…」平原政徳容疑者、鑑定留置の結果は“心神耗弱”状態 近隣住民が見ていた素行「スピーカーを通して叫ぶ」【九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン