体に必要な栄養素を摂取する目的で存在する“サプリメント”。2019年の厚生労働省の調査によれば、日本人のサプリメント利用率は女性28.3%、男性21.7%にものぼるが、摂りかたによっては“逆効果”になることもある。
例えば、魚の油に含まれるDHAとEPA。記憶力を高める効果があるとされる成分だが、魚を好む日本人は、アメリカ人と比べると、体内の水銀濃度は10倍にもなるといわれている。国際医療福祉大学病院教授で国際未病ケア医学研究センター長の一石英一郎さんは言う。
「DHAやEPAは、魚の油です。魚油は微量ながら水銀を含むものもあるため、大量摂取すれば水銀が体内に蓄積し、心筋梗塞のリスクが上がる可能性があります」
コーヒーを好む人は、注意した方がいい。一部のビタミンサプリメントや栄養ドリンクには、カフェインを含むものがあるからだ。薬剤師の福井セリナさんは言う。
「基準量のカフェインであれば、代謝を上げる効果が期待できます。しかし、摂りすぎると血管収縮作用によって血圧が上昇します。実際に、コーヒーとサプリメントの服用によって血管障害を起こし、入院してしまったケースもあります」(福井さん・以下同)
英国食品基準庁やカナダ保健省などは、すでにカフェインの摂取に注意を呼びかけており、過剰摂取で死亡した例も報告されている。
「持病や服用している薬がある場合は、自己判断でサプリメントをのまず、必ずかかりつけ医や薬剤師に相談を。用量は、食事から摂る栄養素を加味して、1日の摂取量を守ることが大前提です。数種類のサプリメントを服用している場合は、1週間単位で量を調節してほしい」
形成外科医の北條元治さんは、「食事」という基本に戻るべきだと話す。
「私自身、食が細く、どうしても足りない栄養素をサプリメントで補うことがあります。ですが、それはあくまで補助。栄養素の吸収量の上限は決まっているため、食事で摂れている栄養素をそれ以上にサプリメントで摂ろうとしても吸収できず、肝臓や腎臓に負担がかかるだけ。健康被害が出なくても、お金のムダになります」(北條さん)
サプリメントさえのんでおけば、簡単に健康になれる──その幻想から逃れることが第一だ。
※女性セブン2022年5月12・19日号