国際情報

ロシアのウクライナ侵攻遅滞を受け中国が台湾侵攻作戦変更か より迅速化へ

中国はどう動くか

中国はウクライナ侵攻が続くなかで台湾に対しどう動くか

 ロシア軍がウクライナに侵攻してからすでに3カ月目に突入した。当初の予想とは異なり、欧米諸国の強力な軍事的支援を受けたウクライナが驚異的な粘りを見せ、頑強に抵抗し、逆にロシア軍が劣勢に立つ局面も出ているとの分析も伝えられる。このような状況のなか、米国の軍事専門家は「中国はロシアの稚拙な軍事作戦を教訓にして、今後、台湾侵攻作戦を実行する場合、その攻撃はより電撃的で、より激烈で、かつ破滅的な破壊を行うだろう」との見方を明らかにした。米政府系報道機関「ボイス・オフ・アメリカ(VOA)」が報じた。

 米国はトランプ前政権時代から中国の軍事侵攻に備えて、秘密裏に海兵隊部隊を台湾に送り、実戦形式で台湾軍を訓練してきた。

 その基本的な戦略は中国の奇襲作戦をいかにして防ぐかということだという。中国が台湾への侵攻を開始する場合、まず海上から台湾封鎖線を敷き、サイバー攻撃で外部との通信を遮断して、ミサイルや爆撃機による空爆で重要施設を破壊。次に台湾の防空網にミサイル攻撃をして制空権を確保したあと、上陸して兵力を台湾本土に送り、地上戦で首都台北など重要都市を攻撃するというシナリオをとる、と米側は予測してきた。

 この作戦は地上戦と島嶼攻撃との違いはあるものの、ロシア軍の対ウクライナ軍事作戦と基本的には同じ発想だといってもよい。

 ところが、中国軍内部ではロシアが当初の計画ほど迅速に戦争に勝利できなかったことに驚きが広がっており、米国や他の外部勢力が介入する前に勝利を得るために、より迅速かつ強烈に攻撃しなければならないと考えるようになっていると米国の一部の軍事専門家は考えているという。

 米空軍の上級戦略顧問であるエリック・チャン氏はVOAに対して「ロシアのウクライナ侵攻が迅速な軍事行動によってウクライナ占領という『既成事実』を作ることを目的としていたように、中国も迅速な軍事行動によって台湾占領の既成事実を作ることを望んでいた。しかし、ウクライナ戦争が長引いていることで、中国の最高指導部は、これまでの作戦よりもさらに迅速で破滅的な戦略が必要だと考えるようになっている」と指摘している。

 つまり、艦船を多数遊弋させ時間をかけて台湾封鎖を実行する余裕はなく、いきなり台北などの台湾本土の重要都市へのミサイル攻撃や空爆、艦船による艦砲射撃などで主導権を奪い、米国などの外国勢力の支援が入る前に、多数の空挺部隊などを台湾に上陸させて、台北や高雄などの重要都市を占領し、1週間程度で中国の制圧下に置くという作戦だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

「ミスタープロ野球」として広く国民に親しまれた長嶋茂雄さん(時事通信フォト)
《“ミスター”長嶋茂雄さん逝去》次女・三奈が小走りで…看病で見せていた“父娘の絆”「楽しそうにしている父を見るのが私はすごくうれしくて」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ犯から殺人犯に》「生きてたら、こっちの主張もせんと」八田與一容疑者の祖父が明かしていた”事件当日の様子”「コロナ後遺症でうまく動けず…」
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
「本人にとって大事な時期だから…」中居正広氏の実兄が明かした“愛する弟との現在のやりとり”《フジテレビ問題で反撃》
NEWSポストセブン
デフサッカー男子日本代表が異例の活動中止に…(時事通信フォト)
【デフリンピック半年前の騒動】デフサッカー男子日本代表が異例の活動中止「監督は聴覚障害に理解があるはずでしたが……」 ろう者サッカー協会が調査へ
NEWSポストセブン
長嶋茂雄・巨人軍終身名誉監督からのメッセージ(時事通信フォト)
《長嶋茂雄さんが89歳で逝去》20年に及んだ壮絶リハビリ生活、亡き妻との出会いの場で聖火ランナーを務め「最高の人生」に
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
「兄として、あれが本当にあったことだとは思えない」中居正広氏の“捨て身の反撃”に実兄が抱く「想い」と、“雲隠れ状態”の中居氏を繋ぐ「家族の絆」
NEWSポストセブン
今年3月、日本支社を設立していたカニエ・ウェスト(時事通信フォト)
《カニエ・ウェストが日本支社を設立していた》妻の“ほぼ丸出し”スペイン観光に地元住人が恐怖…来日時に“ギリギリ”を攻める可能性
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
《子どもの性別は明かさず》小室眞子さんの第一子出産に宮内庁は“類例を見ない発表”、守谷絢子さんとの差は 辛酸なめ子氏「合意を得るためのやり取りに時間がかかったのでは」
NEWSポストセブン
現在、闘病中の西川史子(写真は2009年)
《「ありがとう」を最後に途絶えたLINE》脳出血でリハビリ中の西川史子、クリニックの同僚が明かした当時の様子「以前のような感じでは…」前を向く静かな暮らし
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
六代目山口組の新人事、SNSに流れた「序列情報」 いまだ消えない「名誉職」に就任した幹部 による「院政説」
NEWSポストセブン
元女子バレーボール日本代表の木村沙織(Instagramより)
《“水着姿”公開の自由奔放なSNSで話題》結婚9年目の夫とラブラブ生活の元バレーボール選手の木村沙織、新ビジネスも好調「愛息とのランチに同行した身長20センチ差妹」の家族愛
NEWSポストセブン
宮城野親方
何が元横綱・白鵬を「退職」に追い込んだのか 一門内の親しい親方からも距離置かれ、協会内で孤立 「八角理事長は“辞めたい者は辞めればいい”で退職届受理の方向へ」
NEWSポストセブン