安倍派に食い込んだ取材で知られる元産経新聞政治部長のジャーナリスト・石橋文登氏が語る。
「安倍さんが怒っていることを知って、小渕小委員長と額賀本部長がご説明に来た。安倍さんは『アベノミクスが問題というなら説明せよ』と求め、額賀氏はギリシャの財政破綻などの例を挙げたが、ことごとく安倍さんに論破された。小渕氏は何もいえなかったそうです」
アベノミクス推進派も巻き返しに動く。
安倍氏の肝煎りで2月に4回生以下の若手をメンバーとする「責任ある積極財政を推進する議員連盟」を発足させ、安倍派など若手議員71人を集めて対抗した。
“政敵”と次々会談
時系列でいえば、そこに岸田首相が日銀政策委員会人事で安倍氏に“パンチ”を見舞った形だ。
アベノミクス路線を転換するか否かをめぐって、最大派閥の安倍派(95人)と、岸田政権を支える岸田派(45人)、茂木派(53人)、麻生派(49人)の主流3派が対立する構図ができつつある。
政治ジャーナリストの野上忠興氏は、「安倍氏と盟友関係だった麻生氏はいまや岸田政権の後見人的存在に収まっている。反アベノミクス政局は、これまで手を組んで党内を安定させてきた安倍氏と麻生氏という2大実力者の立場が分かれたことで、党内を二分する大きな権力抗争に発展することを予感させる」と指摘する。
その戦いのキャスティングボートを握るのが第3勢力の二階氏、そして二階氏と連携する菅義偉・前首相や森山派、旧石破派などの反主流派連合になる。菅氏が準備を進め、二階氏がバックアップする菅勉強会は旗揚げを参院選後に先送りしたものの、麻生派の河野太郎・元行革相や無派閥の小泉進次郎・元環境相ら岸田首相と対立する有力政治家が次々に参加の意向を表明し、「参加者は80人を超える」(菅側近)という見方が強い。
安倍派VS主流3派の勢力争いは、二階-菅連合がどちらにつくかで形勢が決まるといっていい。
さしずめ、現在の二階氏のポジションは、羽柴秀吉と明智光秀の山崎の戦いの際、「洞ヶ峠」にとどまって形勢がどちらに転ぶかを見極めようとした筒井順慶や、関ヶ原の合戦で様子見を決め込んだ小早川秀秋に似ている。
二階氏と岸田首相の関係ははっきりいって悪い。