岸田氏は昨年の総裁選で「二階幹事長のありように国民が関心を寄せている。風通しの良い政党にする」と二階氏の党運営を批判して出馬し、「幹事長は1期1年、連続3年を限度とする」と歴代最長の5年以上幹事長を務める二階氏外しを公約して当選した。
二階氏はその恨みを忘れていない。
「派内の会合で岸田内閣の支持率が高い理由がわからないという話題になった時、二階さんはボソッと、『何もしていないからだろう』と吐き捨てるように言い放った。幹事長下ろしをされたことを決して忘れてはいない」(二階派幹部)
一方の岸田首相にすれば、安倍氏との政治決戦を前に二階氏を“野に放った”ままにしておくのは不利だ。そこで二階氏の懐柔に動いた。
首相はまず二階氏肝煎りのGo Toトラベルについて「再開の準備を始める」と表明し、手始めに都道府県内の観光や飲食に使える県民割クーポンを4月1日から拡大。それを“手土産”にその夜、都内のホテルの日本料理店で首相になって初めて二階氏と会談した。
この日の会談は〈夏の参議院選挙での勝利に向け、政府と党が結束していくことが重要だという認識で一致し、ウクライナ情勢や新型コロナ対応などについても意見を交わした〉(NHK)と報じられたが、二階派幹部によると、「二階さんは総理の話をうん、うんと聞き流すだけだった」という。
その後、岸田首相は“政敵”である菅氏を議員事務所に訪ねて25分間会談(4月22日)し、同日夜に二階氏の片腕と呼ばれる森山派会長の森山裕・総務会長代行と会食するなど、自ら二階・菅連合の有力者と次々に会談して動向を探っている。
争うほど影響力は強まる
だが、前出の石橋氏は、首相の懐柔は成功していないと見る。
「二階氏は幹事長を引きずり下ろされた岸田首相のことが嫌いなので、支持することはない。菅さんは補正予算をめぐる岸田首相の対応に批判的だ。今国会で成立した本予算はロシアのウクライナ侵攻の前に編成したもので、いまやフェーズが変わった。
経済対策を打つなら本格的な補正予算を組む必要があるのに、首相は公明党の山口(那津男)代表の要求で表向き今国会で補正を組むといいながら、内容は予備費を積み増すだけで済まそうとしている。菅さんはこれに相当怒っている。岸田首相がいくら二階・菅陣営とメシを食っても、岸田支持になびくことは考えられない」
安倍政権時代から「国土強靭化」を推進してきた二階氏は積極財政派で、菅氏も基本的にアベノミクス推進派だ。