デンマークの世界企業を支える人材
その教育改革の効果は絶大で、デンマークの1人あたりGDPは、1990年の約2万7000ドルから、2020年には6万ドルを超えましたから、優に2倍以上になっています。日本は、1990年段階はデンマークと肩を並べていましたが、今はやっと4万ドルで、大きく水をあけられています。
それから、デンマークのノーベル賞受賞者は13人で、少ないように思われるかもしれませんが、総人口600万人の国ですから、日本の人口に直したら260人です(日本人受賞者はアメリカ国籍も含めて28人/2021年時点)。
さらに、ユニコーン企業(株式評価額が10億ドル以上と評価される未上場のベンチャー企業)は、いま8社あります。すでに上場したスタートアップ企業も多く、たとえばユニティ・テクノロジーズ。同社は、アイスランド出身の創業者によってコペンハーゲンで設立され、ゲーム制作や自動運転に欠かせないミドルウェアを提供しています。
また、ゼンデスク(Zendesk)という会社があります。これはクラウド型カスタマーサービスのプラットフォーム企業です。同社のプラットフォームは、世界140か国、4万社、3億人以上が利用しています。いずれもデンマークで生まれて、資本市場が乏しいのでシリコンバレーに引っ越して、上場したのはナスダックです。
主なグローバル企業としては、海運コンテナ世界一のマースクライン(A.P.モラーマースク)、風力発電機世界一のヴェスタス、ビールのカールスバーグもよく知られています。
それから玩具大手のレゴです。レゴというのはブロックが有名ですが、子供にブロックで遊ばせますと、何をつくるかを頭の中で思い描いて、それを組み立てていきます。それこそ、「0から1を生む」構想力を育む一番いい教育道具はレゴブロックだということで注目されています。この世界トップの玩具メーカーもデンマーク企業です。
こうした世界的な企業を支える人材が、北欧型教育を通して育成・輩出されているのです。
※大前研一『経済参謀 日本人の給料を上げる最後の処方箋』(小学館)より一部抜粋・再構成