国内

日本の「子供にPC1人1台」政策はズレている デンマークはなぜ教育改革に成功したか

北欧諸国は教育改革により危機を乗り越えた(2010年頃のデンマークの授業風景。Ritzau Scanpix/時事通信フォト)

北欧諸国は1990年代の教育改革により危機を乗り越えた(2010年頃のデンマークの授業風景。Ritzau Scanpix/時事通信フォト)

 21世紀の新しい教育を論じる際に、しばしば理想的な取り組みとして紹介されるのが「北欧型教育」だ。「知識詰め込み型」の対極にあって、1クラスの人数が少なく、生徒たちが自由に意見を言い合いながら、「自己肯定感」を高めていく教育──。そんな北欧での取り組みは大いに参考になるが、長年人材育成に携わってきた経営コンサルタントの大前研一氏は、文部科学省主導の学校教育の中で、単に北欧型教育の形だけ真似してみても意味がないと断じる。

 * * *
 文科省サイドから言わせれば、すでに教育改革に取り組んでいると主張するかもしれません。しかし、私に言わせれば、全く改革になっていません(図表1参照)。

 たとえば、1人1台パソコンを支給するというGIGA(ギガ)スクール構想というのがあります。しかし、私が知る限り、今頃になって生徒にパソコンを配っているのは日本だけです。シンガポールでは、20年以上前の1990年代から、学校に通う生徒にパソコンを支給し、各家庭にもパソコンがあるように整備しています。

 しかも今、文科省がやろうとしている程度のIT教育であれば、パソコンではなくスマホで十分です。また、パソコンやタブレットなどをフルに活用した授業ができる教師も少なく、教える内容や教え方も変わっていません。何のためのGIGAスクールなのか、先生たち自身がわかっていないのではないでしょうか。

【図表5】

【図表5】文科省の施策は「目的」が定かでない

何のために教育が必要なのか?

 さらに、クラスの定員上限を、小学校の場合は40人から35人に減らして、中学校でも35人学級にしようとしています。それで文科省は、先生が足りなくなるため、もっと予算が必要になると言っているのですが、学習指導要領どおりに教えるのであれば、たとえば林修さんのように教え方が上手いとされる先生が1人いて、その先生の授業を放送や配信で流せば終わりです。

 指導要領どおりに教えるということは、クラスルームに先生はいらないということになります。これがデジタル社会です。代々木ゼミナールとか駿台予備校とか、そういうところで教えているカリスマ先生の授業を、日本全国どこでも誰でもいつでも聞けるようにすればいいわけです。逆に1人ずつ丁寧に個別指導するというなら、25人以下にすべきです。これはヨーロッパ、北欧の経験から導き出された方法です。

 というわけで、「何のために」という目的のない教育で、1クラスの生徒数だけ減らしていこうとなれば、無駄に手間と時間とお金がかかる。全く意味のない改革です。

関連記事

トピックス

ハワイ別荘の裁判が長期化している
《MVP受賞のウラで》大谷翔平、ハワイ別荘泥沼訴訟は長期化か…“真美子さんの誕生日直前に審問”が決定、大谷側は「カウンター訴訟」可能性を明記
NEWSポストセブン
11月1日、学習院大学の学園祭に足を運ばれた愛子さま(時事通信フォト)
《ひっきりなしにイケメンたちが》愛子さま、スマホとパンフを手にテンション爆アゲ…母校の学祭で“メンズアイドル”のパフォーマンスをご観覧
NEWSポストセブン
維新に新たな公金還流疑惑(左から吉村洋文・代表、藤田文武・共同代表/時事通信フォト)
【スクープ!新たな公金還流疑惑】藤田文武・共同代表ほか「維新の会」議員が党広報局長の“身内のデザイン会社”に約948万円を支出、うち約310万円が公金 党本部は「還流にはあたらない」
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《ほっそりスタイルに》“ラブホ通い詰め”報道の前橋・小川晶市長のSNSに“異変”…支援団体幹部は「俺はこれから逆襲すべきだと思ってる」
NEWSポストセブン
東京・国立駅
《積水10億円解体マンションがついに更地に》現場責任者が“涙ながらの謝罪行脚” 解体の裏側と住民たちの本音「いつできるんだろうね」と楽しみにしていたくらい
NEWSポストセブン
今季のナ・リーグ最優秀選手(MVP)に満票で選出され史上初の快挙を成し遂げた大谷翔平、妻の真美子さん(時事通信フォト)
《なぜ真美子さんにキスしないのか》大谷翔平、MVP受賞の瞬間に見せた動きに海外ファンが違和感を持つ理由【海外メディアが指摘】
NEWSポストセブン
柄本時生と前妻・入来茉里(左/公式YouTubeチャンネルより、右/Instagramより)
《さとうほなみと再婚》前妻・入来茉里は離婚後に卵子凍結を公表…柄本時生の活躍の裏で抱えていた“複雑な感情” 久々のグラビア挑戦の背景
NEWSポストセブン
インフルエンサーの景井ひなが愛犬を巡り裁判トラブルを抱えていた(Instagramより)
《「愛犬・もち太くん」はどっちの子?》フォロワー1000万人TikToker 景井ひなが”元同居人“と“裁判トラブル”、法廷では「毎日モラハラを受けた」という主張も
NEWSポストセブン
兵庫県知事選挙が告示され、第一声を上げる政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏。2024年10月31日(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志容疑者、14年前”無名”の取材者として会見に姿を見せていた「変わった人が来るらしい」と噂に マイクを持って語ったこと
NEWSポストセブン
千葉ロッテの新監督に就任したサブロー氏(時事通信フォト)
ロッテ新監督・サブロー氏を支える『1ヶ月1万円生活』で脚光浴びた元アイドル妻の“茶髪美白”の現在
NEWSポストセブン
ロサンゼルスから帰国したKing&Princeの永瀬廉
《寒いのに素足にサンダルで…》キンプリ・永瀬廉、“全身ブラック”姿で羽田空港に降り立ち周囲騒然【紅白出場へ】
NEWSポストセブン
騒動から約2ヶ月が経過
《「もう二度と行かねえ」投稿から2ヶ月》埼玉県の人気ラーメン店が“炎上”…店主が明かした投稿者A氏への“本音”と現在「客足は変わっていません」
NEWSポストセブン