気付いた時には重症
肝臓は栄養を蓄えたり毒素を分解したりする臓器だ。肝炎とは、何らかの原因で炎症が起き、細胞が破壊されて肝臓の機能が低下する病気である。原因はさまざまあり、大きく分けると、「ウイルス感染」「化学物質(薬物・毒物・アルコールなど)」「自己免疫」の3種類がある。
もっとも多いのが肝炎ウイルスによる肝炎で、A~E型まで5種類あり、A型は生牡蠣などを食べて感染するケースが多く、B型やC型は輸血や性交による感染や母子感染が主体である。
今回の小児急性肝炎にウイルスが関係していると推定されているのは、子供の場合、原因が「化学物質」であるとは考えにくく、「自己免疫」はもともと非常に稀なケースだからである。
ナビタスクリニック川崎の内科医・谷本哲也医師は小児の急性肝炎についてこう説明する。
「肝臓は“沈黙の臓器”と呼ばれているほどで、よほど悪くならないと症状が出ない。検査して初めて気付くことが多いのですが、子供の場合、採血する機会がほとんどないので、より気付かないことが多い。そのため急性肝炎は大人で見つかりやすく、子供では非常に珍しい。今回、厚労省が発表した12人には重い症状が出ていたのではないかと推測できます」
コロナと同じく、感染しているが無症状だったり、極めて軽症だったりして気付かないケースはかなり多いと考えられるという。
では、急性肝炎の原因と見られているウイルスは何か。
5月11日までに世界で約450例の原因不明の小児急性肝炎が報告されていて、イギリスでは約7割の例で「アデノウイルス」というウイルスが検出されていることから、関連が指摘されている。
「アデノウイルスは、流行性角結膜炎(はやり目)やプール熱、感染性胃腸炎などの原因になる身近なウイルスで、80以上の型があります。今回、検出されたのは41型で、胃腸炎を起こすウイルスとして知られていますが、重症化はしにくく、肝炎を起こしやすいウイルスとも考えられていません。そのため、患者の体内にたまたまいただけという可能性も否定できず、現時点では因果関係は不明です」(谷本医師)