芸能

『正直不動産』の福原遥 上司・山下智久を輝かせる発光体を好演

福原遥

芝居のキャリアは長い福原遥

 秀作には必ず脇で光る存在があるものだ。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 春期のドラマの中で、想定を超えて話題が沸騰した作品といえばNHK総合『正直不動産』(火曜日午後10時)でしょう。とうとう来週6月7日、惜しまれながら最終回を迎えます。

 振り返れば、放送開始直後から大きな反響が寄せられてウハウハ状態になったであろうNHK。異例となる三度の“連続再放送”に留まらず、最終回が終わった後にも特別番組『正直不動産 感謝祭』(6月14日午後10時)を放送するとか。手応えがあった証でしょう。

 しかし、いくら主人公役が人気者の山下智久さんだとしても。ドラマがここまで広く話題になり反響を得た理由は、それだけではないはず。理由をつきとめることは「今、人々が求めているドラマ像」について把握することにつながるはずです。

 主人公は嘘八百、口八丁で営業成績ナンバー1、登坂不動産のエース永瀬財地(山下智久)。またの名を「ライアー(嘘つき)永瀬」。平気でウソを絡めながらの営業トークで成績を伸ばしてきた永瀬が、ある日突然土地のたたりによってウソがつけない体質になる。不動産の賃貸や売買をめぐる営業トークの最中に、つい「正直」な話をしてしまい、毎回騒動が起こる……という実に皮肉めいた展開です。

 ペアローン、事故物件、リバースモーゲージ、地面師と、世間を賑わすリアルな題材を料理していく手腕も見事。それもそのはず。原作は『ビッグコミック』(小学館)で連載中の同名マンガ。不動産業界の問題点とそれをめぐる人間模様が実に丁寧によく掘り下げられている。

 という漫画原作を土台に、ドラマを作っていく手法も見事です。永瀬に吹く正直の風の描写。画面に適宜、不動産専門用語についての解説も入る。筋立てはハラハラドキドキ。そこに恋愛、また陰謀も絡めつつ、軽やかなコメディタッチもまぶして、ドンデン返しできれいに着地。これぞ見たいドラマの新ジャンル、と膝を打ちたくなる。

 主人公・永瀬を演じる山下さんも独自性のある演技を見せています。良い意味で「無機質」。感情の変化を外に見せず、ギスギスしたりイジメっぽく湿った雰囲気にならず、常に淡々と反応し正直な見解を吐露する。それが業界の常識を揺るがせ、時に混乱、時に希望、残酷さや面白さを映し出す。そう、永瀬のつるんと無機的な顔は、まるでまわりを映し出す鏡のようです。

 忘れてはならないのが、その永瀬を輝かせている縁の下の力持ちの存在でしょう。新入社員・月下咲良を演じる福原遥さんです。

 正直、登場した当初は可愛いらしくてちょっとドジな部下程度の印象でした。口をすぼめて鈴が転がるような声で話すせいもあり、「何もわかりません、教えてください」という典型的な駆け出し新人アイコンかと思いました。

 ところがどうして。素直で木訥なキャラを遠慮がちに演じつつも、一方で表情に微細な変化をつけ、時にはぐっと前に出て、酔っ払って絡んでみたり。父親との関係を描くシーンでは、笑みを浮かべながら泣いてみたり。

 愛らしいけれど実は「骨太」ということもよく把握できている福原さん。細かな演技をしながら、一方で大胆に躍動することもできる。相手の芝居をきちんと受けながらの演技も役者としての感性の鋭さを感じます。

関連キーワード

関連記事

トピックス

都内の人気カフェで目撃された田中将大&里田まい夫妻(時事通信フォト/HPより))
《ファーム暮らしの夫と妻・里田まい》巨人・田中将大が人気カフェデートで見せた束の間の微笑…日米通算200勝を目前に「1軍から声が掛からない事情」
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
新横綱・大の里(時事通信フォト)
《横綱昇進》祖父が語る“怪物”大の里の子ども時代「生まれたときから大きく、朝ご飯は2回」「負けず嫌いじゃなかった」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ヤクザが路上で客引きをしていた男性を脅すのにトクリュウを呼んで逮捕された(時事通信フォト)
《ヤクザとトクリュウの上下関係が不明に》大阪ミナミでトクリュウを集めて客引き男性を脅して暴力団幹部が逮捕 この事件で”用心棒”はどっちだったのか 
NEWSポストセブン
2013年大阪桐蔭の春夏甲子園出場に主力として貢献した福森大翔(本人提供)
【10万人に6例未満のがんと闘う甲子園のスター】絶望を支える妻の献身「私が治すから大丈夫」オリックス・森友哉、元阪神・西岡や岩田も応援
NEWSポストセブン
新横綱・大の里(時事通信フォト))
《地元秘話》横綱昇進の“怪物”大の里は唯一無二の愛されキャラ「トイレにひとりで行けないくらい怖がり」「友達も多くてニコニコしてかわいい子だったわ」
NEWSポストセブン
ミスタープロ野球として、日本中から愛された長嶋茂雄さんが6月3日、89才で亡くなった
長島三奈さん、自身の誕生日に父・長嶋茂雄さんが死去 どんな思いで偉大すぎる父を長年サポートし続けてきたのか
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
金髪美女インフルエンサー(26)が “性的暴力を助長する”と批判殺到の「ふれあい動物園」企画直前にアカウント停止《1000人以上の男性と関係を持つ企画で話題に》
NEWSポストセブン
逮捕された波多野佑哉容疑者(共同通信)。現場になったラブホテル
《名古屋・美人局殺人》「事件現場の“女子大エリア”は治安が悪い」金髪ロングヘアの容疑者女性(19)が被害男性(32)に密着し…事件30分前に見せていた“親密そうな様子”
NEWSポストセブン
東京・昭島市周辺地域の下水処理を行っている多摩川上流水再生センター
《ウンコは資源》排泄大国ニッポンが抱える“黄金の資源”を活用できてない問題「江戸時代の取引金額は10億円前後」「北朝鮮では売買・窃盗の対象にも」
NEWSポストセブン
ブラジル公式訪問中の佳子さま(時事通信フォト)
《佳子さまの寝顔がSNSで拡散》「本当に美しくて、まるで人形みたい」の声も 識者が解説する佳子さま“現地フィーバー”のワケ
NEWSポストセブン