治療を受けたくても病院が見つからない可能性も…(イメージ)
「こんなに助かっているのに…」
どれだけの患者に影響が出るのだろうか。がんは日本人の「国民病」といわれる。
男性の約65%、女性の約50%が生涯のうちにがんに罹患し、死者のうち3人に1人、年間38万人以上ががんで死亡している。
国立がん研究センターのデータによると、日本のがん患者数(有病者数)は約341万人(2015~2019年。男女計)、2021年に新たにがんになった人(罹患数)は約101万人にのぼると推計されている。
ちなみに年齢別のがん罹患リスクは、60歳男性が10年後までに「がん」と診断される確率が約16%、70歳男性になると約32%にハネ上がる。
しかし、今では、がんは「不治の病」ではなくなった。早期発見や治療法の進歩によって治癒率(5年生存率)がどんどん上昇し、「半分程度は治る」といわれるようになった。
がんの治療法には手術、放射線治療、化学療法(抗がん剤)、免疫療法などがあるが、治癒率改善に大きく貢献しているのが「化学療法」だ。化学療法を行なっている澤野豊明・ときわ会常磐病院外科診療副部長が語る。
「化学療法にはいろんな使い方がある。手術の効果を上げるために事前に抗がん剤でがんの勢いを小さくする方法や、切除手術後に再発を減らすためにも抗がん剤を使う。そして最後が、切除できなかったがんや、再発した人の症状を和らげて患者さんのQOL(生活の質)を高めるために使うケースです」
そのため現在はがん患者の8割が「化学療法」を受けているという調査もある。とくに、最近は免疫療法に抗がん剤を組み合わせた化学療法が大きな成果をあげているという。
「オプジーボを代表とする免疫チェックポイント阻害剤が数種類出てきて、様々ながんに効果があるとわかってきた。現在では、膵臓がんや胃がんなどに抗がん剤と免疫チェックポイント阻害剤を一緒に使えるように適応範囲が広がり、治療が本質的に変わってきた。本当にがんが消える人もいるほどです。消えなくてもよく効いていて、すごく長く生きられる人も出てきている。今までの抗がん剤だけではこんなに生きられる人はいなかったなという印象です」(澤野氏)
がん患者やその予備群にとって「化学療法」は“命綱”ともいえる治療法だとわかる。
それとともにがんは「通院で治療する」時代になった。
都市部を中心に、大病院が次々に通院専門の外来化学療法センターを設置したり、駅前近くに開業する独立系の専門クリニックが増えた。大病院に入院して手術や治療を受けた患者が、退院後、通院に便利な近くのクリニックで化学療法を受けるパターンが増えている。
化学療法の治療を大病院で受けると非常に時間がかかる。婦人科のがんの治療で都内の大病院に通院する40代の医療関係者の話だ。
「朝病院に着いたらまず血液検査です。そして結果が大丈夫であれば抗がん剤の準備の点滴をする。それが終わると本番の抗がん剤治療の順番待ち。私の場合、白血球を増やす薬の点滴もあるので、全部終わるのは夕方、丸1日がかりになります」