「友達にスマホを何台も契約させて、それを転売しました。販売先はおそらく日本のマフィア。でもお金になるから気にしなかった。来日していたベトナムの友達だけでなく、フィリピンとかタイとか、いろんな人にも声をかけ、お金を儲けました」(フォンさん)
フォンさんにとって、日本は憧れの国だった。日本旅行を経験した両親から「日本人はみんな優しい」「街はどこも綺麗で未来的」と聞かされて育ち、日本人のファッションを真似たり、日本のテレビを見て漫画を読み漁った。だが、実際に来日して、お客さんではなく働く一人にとって、日本という国や日本人は優しくないことを思い知らされ、日本に裏切られたような気持ちになった。
「コロナになってからの日本人は、さらに優しくなくなった。お金もくれない、差別もするから、ベトナム人だけでなく外国人(実習生)みんなが日本を嫌いになりました。だから、悪いことをしてもいいと思うようになった。お金だけ稼いで、早くベトナムに帰ろうといつも話していた」(フォンさん)
フォンさんははっきりと語りたがらないが、SNSの投稿を見る限り、スマホの不正入手や転売だけでなく、日本国内で使用される身分証明書の偽造にも関わっていたようだ。こうした犯罪は、日本人の首謀者がいて、弱い立場の外国人が実際の任務を請け負う場合がほとんどだが、そのなかでもフォンさんは実行部隊のリーダー格だったと思われる。母国出身者や同じ実習生の外国人を集めて犯罪行為を促し、リーダーとして割り増しの報酬を確保していたと見られる。事実、誰の名義かまではわからないが、フォンさんは日本滞在中にトヨタの四駆を乗り回し、在日同胞に高級焼肉を振る舞ったり、旅行に連れていった際の写真を多数アップしていた。
SNSアカウントに掲載されている、フォンさんと一緒に写真にうつる外国人の中には、北関東エリアにおいて農作物や家畜の窃盗に手を染め、逮捕された容疑者の顔もある。彼らは、日本人から見れば外国人による「組織犯罪グループ」そのものである。しかし、フォンさんには罪の意識がほとんどない。それはやはり、日本への失望があったから、そして自分達を見下す日本人に「やり返したい」という気持ちがあったからに他ならない。
「このまま日本にいては死ぬと思った。だから少し悪いことでもやって、お金を貯めて国に帰った。人を殴ったりはしていない。そのお金で、車の会社を始めた。いい人もいたが、ほとんどの人が外国人をバカにした。日本への憧れはないし、今は嫌い。二度と行きたくない」(フォンさん)
窮した在日外国人が違法と脱法を繰り返している実情は極端な例かもしれない。そんな人の日本観を聞いても極論だと思うかもしれないが、もっと余裕があるはずの外国人の言動からも「日本の没落」を感じる瞬間が増えてきた。