2011年3月12日、東京電力福島第1原子力発電所を視察し、説明を受ける菅直人首相(左から2人目)ら(福島県大熊町)[内閣広報室提供](時事通信フォト)

2011年3月12日、東京電力福島第1原子力発電所を視察し、説明を受ける菅直人首相(左から2人目)ら(福島県大熊町)[内閣広報室提供](時事通信フォト)

役人に現場に来られても邪魔です

 大規模通信障害の午後、さっそく筆者も近所のauショップを尋ねる。テレビほどの人だかりではなかったが、やはり通信障害について尋ねる顧客ばかりで店内は混んでいた。それでも暴れたり、怒鳴ったりはなく粛々と対応は終わるばかり、店舗だってどうにもならない。「お客様は神様」を盾にする昭和マインドの客なら因縁つけるような連中もいるのだろうが、もう平成どころか令和、時代は変わりつつあるということか。

「困るのよ、なんとかしてちょうだいよ」

 と、高齢者の中には不満を口にする方はいたがそれは仕方がない。むしろその後の日本政府の会見のほうが昭和マインドだったように思う。これについて、KDDIではない別のキャリア系でソフトウェア開発に携わるエンジニアからは別の怒りの言葉をいただいた。

「まだ現場が必死に復旧作業をしているのに行政処分とか役人を派遣とか、総務省が邪魔してどうするんですか。インフラなんだから政府は文句より協力でしょう」

 auの大規模通信障害を受けて、総務省の金子恭之総務大臣は「大変遺憾」として電気通信事業法などに則った「しかるべき対応」、つまり行政処分を匂わせた。また岸田文雄内閣総理大臣の指示で総務省の役人をKDDIに派遣するとした。

「はっきり言って現場に来られても邪魔ですよ」

 あくまで彼の感想だが、筆者は2011年3月11日の東日本大震災における東京電力福島第一原発(以下東電、福一)を思い出す。原子炉が相次いでメルトダウンするという日本の存亡が掛かる原発事故の中、生きるか死ぬかの中で福一に残った技術者や作業員たちのもとに、当時の菅直人内閣総理大臣が政府関係者たちとヘリコプターで乗り込んできた。当時の事情、各々の言い分はそれぞれだが、「決死隊」として命がけで見えない放射能と闘う現場を率いた吉田昌郎所長(2013年死去)は「何で官邸が直接こちらにくるんだ」と『吉田調書』にその行動に対する疑問の言葉を残している。もちろん「本店の本部は何をしているんだ」という東電本体に対する不満も込められてはいるが、鉄火場に素人が大名行列でやってきて「(菅首相は)怒鳴り声ばかり」(池田元久、元経済産業副大臣の回顧)では現場のプロにすれば「邪魔」だろう。

「auが悪いことは当然ですが、仕方のないことなのですからせめて現場には寄り添って欲しかったです」

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