東京電力本社に乗り込み、福島第1原発から撤底しないように手を振りながら幹部を叱責した菅直人首相(画面上段中央)=2011年3月15日午前[東京電力提供](時事通信フォト)
起きたことは社会インフラに関わる重大事だが、その社会インフラの「当たり前」をこれまで支えてきた技術者や作業員が努力してきたことは事実で、だからこそauをみな安心して使ってきたはずだ。今回のような「会社の歴史上一番大きな障害」と述べた技術畑出身の高橋社長はもちろん、KDDIの技術者や作業員たちも悔しいことだろう。「連絡できない」「仕事ができない」と多くのauユーザーが困ったことは事実だが、起きてしまったことをただ詰っても仕方がない。むしろ高度IT社会の中で、自身の連絡手段や通信網は複数確保しておく自助努力が求められるのではないか。何社もキャリアと契約しろとは言わないが、筆者は固定電話の大切さを改めて実感した。一般国民の多くも現場には同情的で、平成までの「不寛容の時代」は終わりつつあるのだろう。
今回の大規模通信障害、auの責任が重大なことは当然であり、事故の解決と補償は今後の課題として取り組んでいくだろうが、筆者にすれば現場を知らない政府や一部マスコミのような価値観のアップデートできていない「昭和マインド」とauユーザーを始めとする「auがんばれ」という一般国民との感覚の乖離のほうが気になった。「auはけしからんが復旧に尽力する現場の方々には感謝する。がんばっていただきたい」くらいのことを言える大臣は、日本にいつ現れるのだろう。
もう令和、「auがんばれ」のほうが正しいと、筆者も思う。
【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)日本ペンクラブ会員、出版社勤務を経てフリーランス。社会問題、社会倫理のルポルタージュを手掛ける。