スポーツ

追悼・二代目若乃花 照ノ富士の横綱昇進で発した「たった一言」の真意

二代目若乃花が語っていた秘話(時事通信フォト)

二代目若乃花が語っていた秘話(時事通信フォト)

 第56代横綱の二代目若乃花(本名・下山勝則氏)が、7月場所中の7月16日に肺がんのため大阪市内の病院で亡くなった。69歳だった。現役時代は「花のニッパチ組」と呼ばれ、同じ昭和28年生まれの北の湖(元横綱)、麒麟児(元関脇)、金城(元関脇)、大錦(元小結)とともに5人衆として活躍した。69歳という年齢はまだ相撲協会に再雇用で残れる歳だが、すでに2013年に相撲協会を退職し、近年はその言葉が伝えられることはほとんどなかった。本誌・週刊ポストでは、昨年秋に二代目若乃花の貴重な肉声を報じていた。

 現役時代は多くのファンに愛された力士だった。相撲ジャーナリストが解説する。

「憎まれ役だった北の湖とは対象的に、色白の甘いマスクで人気を博した。芸者やクラブママなど玄人の女性のファンが多い印象で、同じ二子山部屋所属で“角界のプリンス”といわれた初代貴ノ花(元大関)とともに女性人気を二分した。

 柔和な風貌と違って信念を曲げない人でもあった。現役中に師匠(元横綱・初代若乃花)の長女と結婚の後、離婚して、再婚までした。もともとは二子山部屋の後継者に決まっていたが、その座を捨ててまで再婚したことが注目された。引退後は年寄『間垣』を襲名して部屋を興したが、理事長も務めた重鎮である初代若乃花の関係がネックとなり、冷や飯を食うことになった」

 それでも五城楼や若ノ城など8人の関取を育て、1998年には当時の境川理事長(元横綱・佐田の山)が推し進める年寄名跡売買禁止に反対し、理事選に出馬して当選を果たす。以後、協会と対立しながらも10年間理事を務めたが、2005年に侑子夫人が亡くなり、2007年に脳出血で倒れて車椅子生活になると、理事を下りた。

「体調悪化とともに弟子育成も難しくなったが、2010年2月の“貴の乱”では、二所ノ関一門から離脱し、改革を掲げた貴乃花(元横綱)と行動をともにするなど、反体制の姿勢は変わらなかった」(同前)

 部屋が衰退期に入った頃に入門してきたのが、現横綱の照ノ富士だった。照ノ富士の現在の所属は伊勢ヶ濱部屋だが、2010年12月に入門したのは間垣部屋だったのだ。1990年代は40人近い弟子がいた間垣部屋だが、照ノ富士が入門した当時は力士3人と呼び出し、床山しかいない陣容となっていた。それでも期待を寄せられていたのであろう照ノ富士の入門時の四股名は「若三勝」。師匠である二代目若乃花が大関時代まで名乗った「若三杉」にちなんだものだった。

 その後、二代目若乃花は2013年3月に部屋を閉め、弟子とともに伊勢ヶ濱部屋に転籍。同年12月に65歳の定年を待たずに退職した。

伊勢ヶ濱部屋への移籍の裏側

 一度だけ元関脇・貴闘力のYouTubeに登場(2020年11月)し、協会幹部の批判をしたことがあったが、二代目若乃花の消息が伝えられたことはほとんどなかった。昨年の7月場所後に照ノ富士が横綱昇進を決めた際も、“生みの師匠”の祝福コメントが報じられることはなかった。

 ケガや病気があって大関から序二段まで転落後、復活を遂げて横綱に上りつめたかつての弟子である照ノ富士について話を聞こうと、本誌記者は昨年9月場所後に、大阪市内の介護施設に入所している二代目若乃花を訪ねた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン