不戦勝で11勝目をあげた逸ノ城(時事通信フォト)
時間が足りない!
この日から休場となった遠藤の一番や、不戦勝となった宇良の取組には懸賞も多くかかっていたが、宇良対玉鷲戦にかかっていた中日新聞社賞は志摩ノ海対千代丸戦に振り替えられるなどの措置が取られた。力士を指定している永谷園などの懸賞は取り消された。相撲担当記者が言う。
「他にも、幕内では行司が2番ずつさばくことになるが、木村寿之介と木村晃之助は不戦勝をそれぞれ2番さばいただけ。行司が実際の取組をさばかずに1日を終えるなんて、前代未聞のことじゃないですか。優勝争いのトップを走る逸ノ城は不戦勝で星を伸ばしました」
12日目終了時点で歴代4位の連続出場記録1448を更新中だった玉鷲は、デビュー以来18年間で初の休場となった。翔猿も錦木も初の休場だった。
「新型コロナウイルス関連での休場はやむえない休場のため、連続記録は継続されることになった。場所中の陽性判定による途中休場などコロナに関して相撲協会は細かい規定を作っていなかった。勝ち越しが決まっていた力士や負け越しが決まっていた力士、どちらでもない力士が混在しており、9月場所の番付編成会議は難航必至です」(同前)
また、難航していたのは「時間管理」だ。
中入りの取組は16時頃から始まるが、7番が不戦勝となる13日目は16時30分からに。30分近く遅らせていたのである。通常なら17時頃となる中入り前半の終了は、17時20分だった。若手親方はこう言う。
「NHK中継が終了する18時から逆算した結果だろうが、十両の取組あたりから呼び出しが土俵を掃く光景ばかり目立った。いつもより仕切り時間を長くしていたわけです。ところがなかなかうまくいかず、結びの一番が近づくと逆に時間が足りなくなったようで三役以上の仕切り時間が極端に短くなってしまった。13日目の幕内後半の時計係だった審判員の大鳴戸親方(元大関・出島)が大変そうでした」
14日目の取組では、4人の十両力士を幕内の土俵に上げることでなんとか16番を設定したが、通常の21番から比べれば5番も少ない。新型コロナの感染がさらに広がっており、千秋楽がどうなるかも流動的だ。
「相撲協会は本場所の土俵上や稽古場であれだけ密接しても“取組は濃厚接触ではない”というスタンス。物言いを協議する審判部の親方衆にも感染者も出ているが土俵上ではマスクなし。専門家の指導を受けているというが、今後、本場所をどうやって運営していくかも難しい判断が必要になるだろう」(前出・担当記者)
場所後には関東周辺での夏巡業も再開されるが、万全の対策で開催したはずの本場所でさえ窮地に追い込まれている。このまま巡業が開催できるのだろうか。