献花台にたくさんの人が訪れた

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オムツで対処

 SPとは警護課に所属し、要人警護を専門とする警察官を指す。警察のなかでも過酷な職務ゆえ、志願者には厳しい選別が待っている。佐々木氏が解説する。

「SPになるためにはまず警備講習を受けなければなりませんが、受講には一定の条件がある。一般的にいわれているのは、巡査部長以上の階級、身長173cm以上、柔道もしくは剣道三段以上、拳銃射撃上級、そのほかにも動体視力など細かい要件、公表されていない条件もあります。

 それ以前に、普段の仕事ぶりを見てSPの資質が判断されるので、警備講習受講者の候補者として面接にたどり着くことさえ難しい。警察官のなかでも非常に限られた存在だといえます」

 講習では要人に覆い被さる訓練や要人を囲んで車に乗せる訓練、犯人が刃物や拳銃を持っている場合、犯人が複数いる場合など、様々な状況を想定した訓練が行なわれる。

「その過程でもふるいにかけられていき、最終的にSPに登用されるのは一握りです」(佐々木氏)

 総理大臣には常に3人、前総理には2人のSPがつくが、大臣や安倍氏のような元総理では帯同するSPは1人だけとされている。

 基本は一日に3人交代制だが、要人のスケジュール次第で警備時間が長引くことも多く、緊張状態を強いられるため、その日常は過酷だ。松丸氏が振り返る。

「常に周囲の人間の動きに目を光らせていなければなりません。1人で警護に当たる場合はトイレにも行けないので、成人用のオムツをして対処することもあると聞く。尿意を催さないよう、前日はお酒を飲まないなど、普段の生活にも気を配っているようです。また勤務時間が不規則なので、家庭崩壊や離婚のケースが多いともいわれています」

“エリート”とはいっても、給料が他の警察官より高いわけではない。警護1日あたり550円の「捜査等業務手当」がつくだけで、SPの経験が出世につながるわけでもない。

「昇進を目指す場合はSPも他の警察官と同じ試験を受けることになります。勤務時間が長いSPは試験勉強の時間が限られるので、むしろ不利になるともいえる」(SP経験のある元警視庁職員)

 それでいて自分の命を投げうつ覚悟が必要なのだから、使命感の強い者でなければ決して務まらない職務だ。

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