一方で、中日の選手たちは「どのような打者になりたいか」が見えず、継続性もない。中村コーチが昨年の秋季キャンプから石川昂弥、京田陽太の打撃改造に乗り出したが、実戦で結果が出ないと選手たちの判断でフォームが変わってしまった。石川は打率.225、5本塁打で、7月に左膝前十字靱帯の再建手術で長期離脱に。京田も打率.176、3本塁打とふるわず、守備でも精彩を欠いてファーム暮らしだ。スポーツ紙記者の評価は厳しい。
「石川は抜けた変化球しか長打が打てない。当てにいくような打撃が目立ち、高校時代よりスケールが小さくなっている。京田も打撃で長年結果が出ていないのに、ノリさんに教えてもらってすぐに効果が出るほど甘くない。遊撃の守備が良ければ立浪監督は起用すると言っているのだから、結果論でなくノリさんに教えてもらったことを根気強くやるべきだったと思います。
他の選手にも言えますが、中日の選手は継続性を欠いているように見える。教えてもらったことを自分に合わないと取捨選択することは必要だと思いますが、その結論を出すのが早い。選手に勝手にやらせるなら、ノリさんを招聘した意味がない。ファームの打撃コーチが合うと思うので、2~3年かけて若手を預けてみっちり鍛えるような体制にしたほうがいいと思います」
広いバンテリンドームが本拠地で、和製大砲が成長しにくい環境であることは考慮しなければいけない。ただ、他球団の主砲はバンテリンドームでもきっちりアーチを放っている。ヤクルト・村上宗隆は今季7試合で5本塁打、巨人・岡本和真は6試合で2本塁打、阪神・大山悠輔は9試合で2本塁打をマークしている。彼らが長距離砲として稀有な才能を持っていることは間違いない。ただ、堂上直倫、高橋周平、石川も「高校No.1スラッガー」と将来を嘱望され、ドラフト1位で入団している。だが、堂上と高橋はプロ入り後にコンパクトな打撃に変わった。ミート能力は重要だが、長打力がない選手に怖さはない。中日から強打者が何年も生まれないのはなぜなのか、育成方針から見つめ直す必要があるだろう。
キャンプでは若手選手を鍛えていた中村コーチ(中央)。右はブライト健太
甲子園には出場できなかったがドラ1で3球団が競合した高橋周(時事通信フォト)
難病を公表した平田は苦しいシーズンが続く(時事通信フォト)
堂上は2017年以降、打率が2割台前半(時事通信フォト)