博物館動物園駅は上野駅と日暮里駅との間にあるが、ホームが短く、構造上の観点から延伸工事も難しいために1997年に休止。全列車が停車しなくなった。
それでも博物館動物園駅の駅舎は歴史的建造物として価値が高く評価されていることもあり、京成や地元NPO、有識者などによって保存・活用の道が模索された。多くの協力を得て、2018年に博物館動物園駅の一部区域はイベントスペースとして活用されるとともに限定公開される。
東成田駅も博物館動物園駅も、普段は立ち入ることができない。そうした場所に足を踏み入れられるというプレミアムな体験を組み込んだツアーだけに、即日に完売することも珍しくない。京成が実施するバックヤードツアーにおいて、東成田駅や博物館動物園駅は欠かせないコンテンツになりつつある。
「京成では今年の3月と4月に博物館動物園駅を巡るツアーを実施しています。安全上の観点から電車から博物館動物園駅のホームへ下車することはできませんが、車内からホームを眺める時間を設けたほか、その後に地上の駅舎から入場してホームを歩く体験を組み込みました。また、京成には博物館動物園駅のほかにも寛永寺坂駅・道灌山通駅・西千住駅という廃止された駅があります。以前のツアーでは、これらの駅があった場所で列車を停車させて、車内から見学するという特別な体験をしていただきました」(京成トラベルサービス企画部の担当者)
ほかにも、東武鉄道は一般公開していない東武浅草駅のバックヤードツアーを10月18日から催行することを発表している。同ツアーでは、東武浅草駅に残る貴賓室の公開が目玉になっている。
遊休資産を有効活用する新しいツアー誕生への期待
今のところ、海外旅行客の受け入れを全面的に再開させる機運にはなっていない。そのため、2019年まで右肩上がりで増えてきた訪日外国人観光客に期待はできない。それならば…と、鉄道会社は遊休資産を活用して、国内旅行客の取り込みを図るしかない。
これまで旅行代理店などが行程を組むようなツアーは鉄道ファンに不評だった。なぜなら、旅行代金が高いだけで、鉄道ファンが望むような鉄道体験ができなかったからだ。それなら、旅行代理店に頼らず個々が自由に行動した方が、自分の好きな列車に乗れるし、撮ることができる。
しかし、関係者しか立ち入れないバックヤードツアーは高い旅行代金を払う価値がある、という判断が働く。そうしたツアーには、鉄道会社や旅行代理店といった存在が欠かせない。旅行者にとっても、鉄道事業者・旅行代理店にとってもwin-winの関係が築ける。
今後、鉄道各社は遊休資産を活用して度肝を抜くような新しいツアーを打ち出してくるだろう。それに伴い新しい鉄道の楽しみ方が生まれる可能性もある。