”日本で一番本を売る”

「日本で一番本を売る動画クリエイター」と言われる

 内定を辞退していなかったら、TikTokも始めていなかったので、あのとき自分の気持ちに正直になれてよかったと思っています。幸い、動画は最初から反響がよくて、4本目の動画で紹介した小説が重版したときに、「本気でこれを頑張ろう」と思えました。

 毎月15~20冊くらいの小説を読んで、動画に取り上げる作品を選びます。もちろん本を選ぶときはリアル書店に行って手に取って選びますよ。タイトルに惹かれる本を手に取ることが多いかな。バシッと決まっているタイトルも好きですし、逆に、最近流行っているまったく意味のわからないタイトルにも惹かれます。

 小説以外に、ノンフィクションも読みます。とくに事件ルポは好きなジャンルです。『消された一家―北九州・連続監禁殺人事件―』(新潮社)にはけっこうハマりました。事件を扱っているYouTubeもよく見ます。物騒ですが、つい気になって見てしまいます。

 最近読んだノンフィクションでは、新書『正義を振りかざす「極端な人」の正体』(光文社)が面白かったです。SNSの炎上事件が多発していることが気になって手に取ったのですが、炎上の仕組みがとてもわかりやすく、一気に読んでしまいました。

『ママがもうこの世界にいなくても』(小学館)も、今年に入って手に取ったノンフィクションの1冊。著者の遠藤和さんは24歳で亡くなっています。今年、僕も24歳になる。同世代の方の話だったので、ものすごく考えさせられました。

 テーマに重みを感じて、何日かにわけて1週間ほどかけて読み進めました。夫の遠藤将一さんの序文にある、〈正直な気持ちとは違うから、やり切ったねとか、立派な最期だったとか、そんなことは言いたくありません。どんなことをしても、生きてほしかった。〉という言葉にグッときましたね。将一さんに感情移入したのは、僕が男だからでしょうか。

 和さんは、命懸けの妊娠と出産に挑み、闘病もあきらめなかった。ものすごい意志だと思います。自分の母がこの本を読んだら何を思うんだろう、とも考えました。やっぱり、母親として、最後まで子育てができなかったことのつらさや苦しさを感じるのかな。

 いまの小説は伏線回収など、エンターテインメントとしての技術がものすごくレベルアップしてきています。一方、ノンフィクションは、本当に起きたことのリアリティが細部に至るまで書き込まれ、まさに当事者しか知り得ないような現実を僕たちに突きつけてくる。今後の人生を過ごしていくなかで、判断に迷ったときに、和さんの強い言葉、気持ちを思い出すだろうな――そう思える作品でした。

◆けんご@小説紹介
小説紹介クリエイター。スマホアプリ「TikTok」などのSNSで、わずか30秒ほどで小説の読みどころを紹介する動画を次々に投稿。作品の的確な説明と魅力的なアピールに、SNS世代の10〜20代から絶大な支持を得ている。2022年4月、初の小説『ワカレ花』(双葉社)を上梓。

内定を辞退して今や人気TikTokerに

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