肛門にできるがんの特徴と仕組み
問題は、肛門管がんを見慣れていない医者が直腸がんと誤診したり、2種類のがんが正しく診断されないケースがあることです。腺がんとの診断で外科手術が必要とされた患者が私のクリニックに来てよく調べたところ、扁平上皮がんだったということがあります」
国立がん研究センターによると肛門管がんは腺がんの場合が多く、「腺がんなら平均5年生存率は大腸がんと同様で70%ほど」(佐藤医師)だという。一方、扁平上皮がんの割合は全体の2割ほどだが、誤診は患者の人生を大きく変えてしまう。
「肛門を切除するくらいなら治療をしないという人もいて、腺がんか扁平上皮がんかの診断は極めて重要です」(同前)
また、佐々木医師は、「肛門にできるがんの潜在患者数が、少なく見積もられている」と指摘する。
「肛門のがんは希少だと言われますが、見落としや見逃し、誤診までを含めたら潜在的な患者数はもっと増えるはずです。肛門にできるがんについては、医師の間でも認知されていない現状があります。そのうえ、肛門科に通うのが精神的にハードルが高いと感じる人もいる。手遅れにならないように、生活習慣を見直すことも重要です」
※週刊ポスト2022年8月5・12日号