芸能

深夜にお色気ドラマ乱発、一方で純愛回帰も TV局が対照的な戦略を進める事情

松本若菜

『復讐の未亡人』に主演する松本若菜

 夏ドラマが始まり、多くの作品が放送されているが、深夜枠のドラマにいつもとは違う“異変”が見られるという。お色気要素のあるドラマが増えているのだ。その一方で、純愛回帰の流れも進んでいるという。いったいどういうことか? テレビ局の狙いについてコラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが分析する。

 * * *
 6日スタートの『個人差あります』(東海テレビ・フジテレビ系)でようやくすべての夏ドラマがそろいますが、全体を見て気づかされたのは、深夜帯にベッドシーンを前面に押し出した作品が3本も放送されていること。今年に入ってここまでは、キスシーンこそあっても、それを繰り返して見せ場にするようなお色気系ドラマはなかっただけに変化を感じさせられます。

 その3作とは、強盗犯と謎のセレブ妻が北海道を目指して逃避行する『雪女と蟹を食う』(テレビ東京系)、コンプレックスを抱える美術講師が風俗嬢に本気の恋をする『ロマンス暴風域』(MBS・TBS系)、夫を自殺で失った妻が勤務先に潜入して復讐を重ねる『復讐の未亡人』(テレビ東京系)。いずれも主人公の物語を進める上で、ベッドシーンが重要な役割を果たしています。

 ところが深夜帯のドラマには、もう1つの流れがありました。それは「昭和の純愛に回帰」というお色気とは真逆のコンセプト。実際、今夏は『消しゴムをくれた女子を好きになった。』(日本テレビ系)と『みなと商事ランドリー』(テレビ東京系)の2作が放送されています。

 お色気と純愛。深夜帯のドラマに両極端な傾向が表われている理由を掘り下げていきましょう。

配信との相性がいいお色気ドラマ

 まず前提として書いておきたいのは、近年では「深夜帯ですらベッドシーンを前面に押し出した作品がほとんどない」こと。BPOの設立以降、特に女性の裸を映した作品がゴールデン・プライム帯からほとんどなくなり、さらにコンプライアンスが求められるようになったことで、徐々に深夜帯からも減っていきました。ちなみに現在ゴールデン・プライム帯では『テッパチ!』(フジテレビ系)が毎週イケメンの半裸シーンを放送して賛否を集めていますが、露出としては「これが精一杯」という分かりやすい事例でしょう。

 ではなぜ今夏は3作も放送されているのか。その理由として最も大きいのは、配信視聴数を上げるため。現在テレビ局は視聴率をベースにした放送収入の落ち込みをカバーすべく、「配信関連の収入をどう増やしていくか」を進めているところです。

 配信である以上、放送時間の早い遅いは関係なく、深夜帯にとってはゴールデン・プライム帯と同列でヒットを狙えるチャンス。むしろ深夜帯はゴールデン・プライム帯より表現の幅が広いため、「配信再生数を上げること」「自社系列の動画配信サービスにおける有料会員数アップにつなげること」を期待されているのです。

もともと配信では、お色気を前面に出した作品は再生数を稼げるコンテンツの1つでした。だからこそ「深夜帯なら放送できるギリギリの表現まで攻めたドラマを作り、配信での収入を得ていこう」という戦略を採っているのでしょう。

 ちなみに冒頭にあげた3作は、いずれも漫画の実写ドラマ化。漫画もネット上ではドラマ以上にお色気を前面に押し出した作品の人気が高く、だからこそドラマのプロデューサーたちはその中でより配信数が稼げそうな漫画を選ぼうとしているのです。

 実は『ロマンス暴風域』を放送したドラマ枠『ドラマイズム』では、昨年も『サレタガワのブルー』『凜子さんはシてみたい』というベッドシーンを前面に押し出した漫画を実写化していました。同枠は今後も年1~2作ペースでお色気を前面に押し出した作品を放送し、配信視聴を積極的に狙っていくのではないでしょうか。

関連キーワード

関連記事

トピックス

告示日前、安野貴博氏(左)と峰島侑也氏(右)が新宿駅前で実施した街頭演説(2025年6月写真撮影:小川裕夫)
《たった一言で会場の空気を一変》「チームみらい」の躍進を支えた安野貴博氏の妻 演説会では会場後方から急にマイクを握り「チームみらいの欠点は…」
NEWSポストセブン
13日目に会場を訪れた大村さん
名古屋場所の溜席に93歳、大村崑さんが再び 大の里の苦戦に「気の毒なのは懸賞金の数」と目の前の光景を語る 土俵下まで突き飛ばされた新横綱がすぐ側に迫る一幕も
NEWSポストセブン
中国の人気芸能人、張芸洋被告の死刑が執行された(weibo/baidu)
《中国の人気芸能人(34)の死刑が執行されていた》16歳の恋人を殺害…7か月後に死刑が判明するも出演映画が公開されていた 「ダブルスタンダードでは?」の声も
NEWSポストセブン
学歴を偽った疑いがあると指摘されていた静岡県伊東市の田久保真紀市長(右・時事通信フォト)
「言いふらしている方は1人、見当がついています」田久保真紀氏が語った証書問題「チラ見せとは思わない」 再選挙にも意欲《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
高校野球で定められている応援スタイルについての指導指針は競技関係者と学校関係者を対象としたもので、一般のファンは想定していない(写真提供/イメージマート)
《高校野球で発生する悪質ヤジ問題》酒を飲んで「かませー」「殺せ」と声を上げる客 審判がSNSで写真さらされ誹謗中傷される被害も
NEWSポストセブン
参院選の東京選挙区で初当選した新人のさや氏、夫の音楽家・塩入俊哉氏(時事通信フォト、YouTubeより)
「結婚前から領収書に同じマンション名が…」「今でいう匂わせ」参政党・さや氏と年上音楽家夫の“蜜月”と “熱烈プロデュース”《地元ライブハウス関係者が証言》
NEWSポストセブン
学歴を偽った疑いがあると指摘されていた静岡県伊東市の田久保真紀市長(共同通信/HPより)
《伊東市・田久保市長が独占告白1時間》「金庫で厳重保管。記録も写メもない」「ただのゴシップネタ」本人が語る“卒業証書”提出拒否の理由
NEWSポストセブン
7月6~13日にモンゴルを訪問された天皇皇后両陛下(時事通信フォト)
《国会議員がそこに立っちゃダメだろ》天皇皇后両陛下「モンゴルご訪問」渦中に河野太郎氏があり得ない行動を連発 雅子さまに向けてフラッシュライトも
NEWSポストセブン
参院選の東京選挙区で初当選した新人のさや氏、経世論研究所の三橋貴明所長(時事通信フォト)
参政党・さや氏が“メガネ”でアピールする経済評論家への“信頼”「さやさんは見目麗しいけど、頭の中が『三橋貴明』だからね!」《三橋氏は抗議デモ女性に体当たりも》
NEWSポストセブン
かりゆしウェアをお召しになる愛子さま(2025年7月、栃木県・那須郡。撮影/JMPA) 
《那須ご静養で再び》愛子さま、ブルーのかりゆしワンピースで見せた透明感 沖縄でお召しになった時との共通点 
NEWSポストセブン
参院選の東京選挙区で初当選した新人のさや氏(共同通信)
《“保守サーの姫”は既婚者だった》参政党・さや氏、好きな男性のタイプは「便利な人」…結婚相手は自身をプロデュースした大物音楽家
NEWSポストセブン
松嶋菜々子と反町隆史
《“夫婦仲がいい”と周囲にのろける》松嶋菜々子と反町隆史、化粧品が売れに売れてCM再共演「円満の秘訣は距離感」 結婚24年で起きた変化
NEWSポストセブン