昭和の純愛は10~50代を幅広く狙える
一方の純愛も、「ファンの熱が高いため、リピート視聴やクチコミを誘いやすく、配信回数を伸ばせる」という点で深夜帯の新たな定番ジャンルになりつつあります。
ちなみに『消しゴムをくれた女子を好きになった。』は、実話をベースにした13年にわたる片想いを描く純度の高いラブストーリー。さらに『みなと商事ランドリー』は、もはや純愛を代表するジャンルになったBLであり、「『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系)のヒットを踏襲したい」という願いがうかがえます。
どちらも純度の高さは昭和時代のラブストーリーを彷彿させるものがあり、その意味で恋愛ドラマのメイン視聴者層である10~30代だけでなく、40~50代も狙えるところも強みの1つ。ネットの普及で「人と出会いやすく、別れやすい」「趣味や仲間との時間を楽しみやすい」時代になって、一途に思い続ける純愛がファンタジーに近いものに変わり、だからこそ「ドラマの世界で楽しみたい」と思うものになったのではないでしょうか。
純愛とお色気の両極ではなく、その間にある普通のラブストーリーは、「メインテーマとしてはほとんど扱われない」というのが現状。たとえば「ラブストーリー枠」とも言われるTBSの火曜ドラマは今夏『ユニコーンに乗って』を放送していますが、こちらはテーマの大半が仕事であり、恋愛要素は2~3割程度に留まるというバランスで構成されています。
とはいえ、冒頭にあげたお色気系の3作も、突き詰めれば1人を思う純愛のようなテイストもあり、やはり視聴者は求めていて作り手たちはそれに応えようとしているのかもしれません。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。