新型コロナウイルスの感染拡大による行動制限などの影響でフードデリバリーのニーズが急増し、副業で配達員を始めた人も多い(イメージ、時事通信フォト)
この改正案が通ればおおむね「300万円以下の副業は雑所得」として扱われるだろう。あえて専門的には異なることを承知で書くが、これは「事実上の増税」と言ってもいい。
ちなみに「不動産所得」は「事業所得」と別で兼業地主や大家、不動産投資は除外されるため改正案には含まれない。正当な理由があるのはわかるが国税、敵に回したくない相手をよく見定めている、と考えるのは穿ち過ぎか。それでなくとも日本は国際比較調査で中間層の痛税感が強いとされているのに、その傾向をさらに強めることになるのかもしれない。
この改正案が通れば300万円以下の副業所得は基本「雑所得」となるため「青色申告」はもちろん「損益通算」も出来ない。「青色申告特別控除」は10万円から65万円まで受けられるが「雑所得」となればその特別控除は受けられず、事業種別にもよるが最大税率55%という高い税率を課せられる。もちろん「特に反証がない限り」というエクスキューズはついているが、こうした税務署に対しての「反証」がどれだけ有効か、は長く自営業をしている方ならご承知のことだろう。
また副業の多くは事業所得での申告だとしても白色申告(基礎控除48万円)だと思うが、青色であれ白色であれ、副業者にとっては後者の「損益通算」ができなくなることが一番厳しいかもしれない。
とくに副業でネット販売などをしているサラリーマンは仕入れで損をしたり、思うように売れないという場合もあるだろう。その副業がこれまで通り「事業所得」なら本業と含めて黒字と赤字を相殺できたはずが「雑所得」では認められない。マニア向けのネットショップを手掛けるサラリーマンが語る。
「いや厳しいですよ。(雑所得にされたら)仕入れは今まで以上に慎重になるしかないです。兼業の販売業者が一番厳しくなるのでは。申告しない人が増えるだけではないでしょうか」
フードデリバリーなどに副業として携わっているサラリーマンも同様だ。ギグワークでデリバリーの請負契約をしている兼業配達員が語る。
「会社の休みや余裕のあるときは就業後に配達の副業をしています。年間100万円ちょっとでしょうか。副業は会社に認められているので申告は問題ないのですが、雑所得だと実際の収入は減ってしまいます」
雑所得でも車両代や整備代、ガソリン代などの経費は差し引けるが(認められるかは別問題)、足が出た場合の赤字相殺は認められない。分冊系の歴史本やソーシャルゲームのシナリオなどを兼業で請け負った経験のあるフリーライターもこう語る。
「副業の年収は150万円くらいです。専業では厳しい金額ですが副業としては悪くないし、物書きとしての夢を追っている面もあります。元手がかからない仕事だと思われるかもしれませんが、書くための資料代も掛かりますしゲームをするのも仕事です。すべてをクライアントが出してくれるわけでもありません。改正されれば収入は減ることになるのでしょう」