ビジネス

国税庁「300万円以下の副業は雑所得」案はサラリーマン狙い撃ちの愚策ではないか

真面目に確定申告をする副業するサラリーマンは要注意?(イメージ)

真面目に確定申告をする副業するサラリーマンは要注意?(イメージ)

 新型コロナウイルスによって経済状況が変化した結果、副業を認める企業が増えつつあることもあり、勤務先とは別にもう一つの仕事を始めたサラリーマンも少なくないだろう。ところが、この機運に水を差すような、所得税の法令解釈を一部改正する案が提示されている。俳人で著作家の日野百草氏が、実質的には税負担と痛税感ばかりが増すかもしれない、300万円に達しない副業を事業所得ではなく雑所得とする法令解釈の改正案について考えた。

 * * *
 ついに、サラリーマンの副業が国税庁に狙われた。

 このままの改正案なら、金額が300万円を超えない副業は国から「事業所得」でなく「雑所得」として一律に扱われることになる、かもしれない。税の水平的、公平性のために、という理由なのだろうが、生活に少しでもゆとりが欲しくて始めた副業によって税負担が重く感じられる本末転倒な労働実態を生み出してしまう、かもしれない。

 重ねて「かもしれない」をつけたが、これは現状あくまで「案」だからである。まだ意見を出すことも、変えることだってできるかもしれないからだ。

 2022年8月1日から8月31日まで、国税庁は『所得税基本通達の制定について』として一部改正(案)を行政手続法39条の「意見公募手続」(以下、パブリックコメント)に基づき、広く意見を募集している。その中の「業務に係る雑所得の範囲の明確化」(雑所得の例示等)がサラリーマンの副業を狙い撃ちする「かもしれない」案であり、本稿の主題でもある。

 本稿、非正規も含めた主たる収入を被雇用者として得ている者すべてを便宜上「サラリーマン」とする。また納税申告は個々別でその申告内容も税務署の判断も変わるので、あくまで一般論、簡易な原則のみを記している。白色申告で「合計所得金額2400万円以上は段階的に控除額引き下げ」など、極めて稀と思われる適用対象についても省略した。実際の個別判断は所轄税務署、税理士などに相談して欲しい。

 30年間賃金の上がらない日本。サラリーマンにとって副業は生活向上、いや生活維持のための自己防衛でもあった。もちろん、自分の夢のために専業では難しい仕事を副業で、という形で夢を実現している、もしくは実現しようとしている人もあるだろう。

 そうした人々の副業が、このままでは300万円を超えない場合、一律に事業所得でなく雑所得として扱われるかもしれない。記憶に新しいところでは、消費税免税事業者が消費税を納めることになる(簡便に記した)インボイス制度が2023年度10月1日から導入されることで大揉めの昨今、またぞろ国税庁は一般国民、それも今度はサラリーマンを狙い撃ちに来た。

 改正案の概要は以下の通り。

関連記事

トピックス

滋賀県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月25日、撮影/JMPA)
《すぐに売り切れ》佳子さま、6万9300円のミントグリーンのワンピースに信楽焼イヤリングを合わせてさわやかなコーデ スカーフを背中で結ばれ、ガーリーに
NEWSポストセブン
注目される次のキャリア(写真/共同通信社)
田久保真紀・伊東市長、次なるキャリアはまさかの「国政進出」か…メガソーラー反対の“広告塔”になる可能性
週刊ポスト
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
《安倍晋三元首相銃撃事件・初公判》「犯人の知的レベルの高さ」を鈴木エイト氏が証言、ポイントは「親族への尋問」…山上徹也被告の弁護側は「統一教会のせいで一家崩壊」主張の見通し
NEWSポストセブン
この笑顔はいつまで続くのか(左から吉村洋文氏、高市早苗・首相、藤田文武氏)
自民・維新連立の時限爆弾となる「橋下徹氏の鶴の一声」 高市首相とは過去に確執、維新党内では「橋下氏の影響下から独立すべき」との意見も
週刊ポスト
元・明石市長の泉房穂氏
財務官僚が描くシナリオで「政治家が夢を語れなくなっている」前・明石市長の泉房穂氏(62)が国政復帰して感じた“強烈な危機感”
NEWSポストセブン
新恋人のA氏と腕を組み歩く姿
《そういう男性が集まりやすいのか…》安達祐実と新恋人・NHK敏腕Pの手つなぎアツアツデートに見えた「Tシャツがつなぐ元夫との奇妙な縁」
週刊ポスト
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった
《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状
NEWSポストセブン
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン
35万人以上のフォロワーを誇る人気インフルエンサーだった(本人インスタグラムより)
《クリスマスにマリファナキットを配布》フォロワー35万ビキニ美女インフルエンサー(23)は麻薬密売の「首謀者」だった、逃亡の末に友人宅で逮捕
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左/バトル・ニュース提供、右/時事通信フォト)
《激しい損傷》「50メートルくらい遺体を引きずって……」岩手県北上市・温泉旅館の従業員がクマ被害で死亡、猟友会が語る“緊迫の現場”
NEWSポストセブン
WSで遠征観戦を“解禁”した真美子さん
《真美子さんが“遠出解禁”で大ブーイングのトロントへ》大谷翔平が球場で大切にする「リラックスできるルーティン」…アウェーでも愛娘を託せる“絶対的味方”の存在
NEWSポストセブン
ベラルーシ出身で20代のフリーモデル 、ベラ・クラフツォワさんが詐欺グループに拉致され殺害される事件が起きた(Instagramより)
「モデル契約と騙され、臓器を切り取られ…」「遺体に巨額の身代金を要求」タイ渡航のベラルーシ20代女性殺害、偽オファーで巨大詐欺グループの“奴隷”に
NEWSポストセブン