邦ロック再流行の背景に何があるのか──。2010年代初頭、フェスブームを背景に「四つ打ち」の邦楽ロックバンドが多くのファンに支持された。『ロック・イン・ジャパン・フェスティバル』や『フジロックフェスティバル』などのロックフェスが、一部の音楽マニアだけでなく多くのファン層に受け入れられるようになり、フェスの現場で体を動かし、誰でもノリやすい、踊りやすいバンドサウンドとして“四つ打ち”のリズムが受け入れられた側面がある。
そうした中で、2010年代後半になると邦ロックバンドブームは徐々に下火になっていったが、2022年現在、高校生や大学生を中心に、ふたたび「邦ロック」が流行しているのだという。実際、音楽サブスクリプションサービスのトップ100には邦ロックバンドが目立つ。若い世代のあいだでは、「King Gnu」や「Official 髭男dism」といった紅白出場バンドのほか、「Saucy Dog」「マカロニえんぴつ」「backnumber」「Awesome City Club」「Novelbright」「My Hair is Bad」といったバンドが根強い支持を得ている。
なぜ今、若者層に邦ロックが受け入れられているのか。取材を進めていく中で、令和ティーンが口々に発するキーワードがあった。それが「TikTok」と「エモいバンド」という言葉だ。
TikTokの繰り返し再生で「聴いたことある!」
都内の私立大学で軽音楽部に所属し、バンドではベースを担当しているという男子学生・Aさん(20歳)はこう話す。
「TikTokから邦ロックが流行したと思います。TikTokは各動画15秒くらいなので、手軽に見られる、かつ繰り返し見続けてしまうので、バックグラウンドの音楽が頭に残りやすいんです。実際、周りで音楽はTikTok発信でバズることが多いですし、大学の友人ともよくTikTokでバズっている楽曲の話をしますね。とくに体を動かしたり、ダンスをしたりする動画にマッチするのが邦ロックバンドの曲なので、TikTokとの相性が良いのでしょう。TikTokで流行れば、他のサブスクのランキングでも上位に入るので、そのプロセスで邦ロックが流行っているのではないでしょうか」(Aさん)
ライブ通いが趣味だという女子学生・Bさん(21歳)は、SNSの影響についてこう話す。
「自分の周りでも邦ロックが流行っています。TikTokなどで邦ロックの音楽がよく使用されていることが理由だと思います。動画と一緒に何回も同じ楽曲を耳にするので、印象に残りやすいですし、若い世代への拡散力は大きいと感じます。友達に勧められた曲で、『あ、この曲聴いたことある!』となる場合は、ほとんどTikTokで流行っている曲ですね。私が好きなバンドは『My Hair is Bad』、通称マイヘアです。切ない感情が同世代に刺さっていて、私の周りでもハマっている人が多い。テレビにでないところも魅力的です」(Bさん)