芸能

橋本愛『家庭教師のトラコ』 遊川和彦氏による立体的脚本の「着地」は決まるのか

橋本愛(時事通信フォト)

多面的な表情を見せる橋本愛(時事通信フォト)

 もはや視聴率だけで作品の質を議論するのはナンセンスだろう。数字が奮わないからといって面白くない、わけでもない。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
「爆死」などと報じられているのが、脚本家・遊川和彦氏が手がけるオリジナルストーリー、『家庭教師のトラコ』(日本テレビ系 水曜午後10時)。第三話が5.4%と視聴率が右肩下がりだからか、人気の脚本家に注目が集まるゆえか。たしかに『家政婦のミタ』の最終回視聴率は40%。しかし、あのお化けドラマと比べてしまうのは詮ない。

 今回のドラマの主人公は、伝説の家庭教師・トラコこと根津寅子(橋本愛)。「100%希望の学校に入れる」家庭教師として名を知られ、親たちは何とかして我が子を指導してもらおうと願う。しかし、トラコの風変わりすぎる指導に拒絶反応を示し途中脱落していくケースも多い。

 そのトラコが、年齢も問題もバラバラな3つの家庭の3人の子どもを担当することになったところからドラマは始まりました。

 クセの強い主人公です。風変わりな女性が突如、家庭内に入ってきて問題を抉り出し過激な方法で再生していく--ちょっと筋立てを聞くと『家政婦のミタ』を連想してしまい、共通の匂いを感じてしまう。

 喰わず嫌いというのか、既視感か。色眼鏡をかけて第一話を見た視聴者も多いかもしれません。「ああ、またこういう雰囲気ね」「わかったわかった」と納得しそのまま離脱してしまった人もいるかも。何を隠そう、私自身がその一人でした。

 しかし、橋本愛さんが気になる。何をしでかすかわからない不可思議な魅力を纏った役者さんで、秘めたるポテンシャルが爆発しそう。ドラマ好きとしては関心が捨て切れず、改めて第二話、第三話、第四話を見てみて、なるほどそういう物語だったのかと合点したのです。

 このドラマは、どうやら「3D」構造をしているようです。

 家のように立体的に構成されていて、目の前の部分だけ見ても全体像はよくわからない。例えば玄関や窓の形だけ見ても、家全体の個性がよくわからないように。

 しかし、様々な部屋へ入ったり上から俯瞰したりすると設計者の狙いや味わいがわかってくる。このドラマも複数回を続けて見ることで、やっと狙いが見えてきました。

 例えば、第一話は「分かんない」、第二話「しょうがない」、第三話「すごくない?」。3つの言葉がキーになり展開していきました。すべてがトラコの「嫌いな言葉」であり、口にする子どもたちを変えていこうとする。さらに第四話では「心配ない」という母親の言葉が問題となっていました。

 物語を進めていくための「道具」も風変わり。第一話は1万円、第二話は5000円、第三話は20万円。「お金」という道具を使いつつ、「本当に価値のある行為とは何か」ということを考えさせようという深いテーマ性と構成がある。

 しかし、日本のドラマではこうした立体的な構成の脚本は少数派のためか、なかなか大衆の心を掴むのが難しい。一方でうまくハマるとブレイクするのが遊川氏の作品なのでしょう。

関連記事

トピックス

2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
横浜地裁(時事通信フォト)
《アイスピックで目ぐりぐりやったあと…》多摩川スーツケース殺人初公判 被告の女が母親に送っていた“被害者への憎しみLINE” 裁判で説明された「殺人一家」の動機とは
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト