兼業者も多いフードデリバリー(イメージ)

兼業者も多いフードデリバリー(イメージ)

・青色申告ができない。
雑所得には白色申告(以下、白色)しかなく申告特別控除がない。青色申告なら10万円から65万円までの申告特別控除を受けられるが、雑所得は白色申告なので「なし」。青色で処理してきた300万円に満たない副業の場合、納める税金が上がる。

・損益通算ができない
青色申告の場合、本業と含めての黒字と赤字を相殺できるが雑所得の場合は認められない。間違いなく納める税金は上がる。これについては後述する。

やはりフードデリバリーも狙われたな

 本旨ではないためこの2点に絞り、少額減価償却資産の特例、法令上の家事按分、青色事業専従者給与の経費化などは割愛するが、要は政府として「300万円を超えない副業は青色申告させたくない」のだろう。「300万円を超えない副業は事業ではない」ということか。これまでの個別判断を標準化したい思惑もあるのかもしれない。もちろん雑所得でも経費は落とせる(その判断は税務署による)が、青色申告なら特別控除がつく上に本業の給料と損益通算できるため税制面での有利さは計り知れない。それを逆手にとった故意かつ過度な赤字による脱税も横行していることは事実だが、副業・兼業で仕事をしているサラリーマン(本稿、雇用形態に限らず主たる家計を被雇用者として得ている者すべてを便宜上、サラリーマンとする)の多くは副業も「事業」として取り組んでいる。また30年間賃金が上がらなかった日本、副業もまた「生活の足し」はもちろん「自己防衛」のためでもあった。

「副業で300万円いかなければ雑所得ですか。他の副業も同じかもしれませんが、やはりフードデリバリーも狙われたな、という感想です」

 情報提供のお世話になっていただいている配送員、彼は専業ではなく、平日の日中は中小企業のサラリーマンとして働き、休日や余裕のある平日夜間、少しの時間にフードデリバリーの副業をしている。

「昨年は約100万円くらいですが、これでも時間を考えれば自分では稼いでいるほうだと思います。300万円なんて無理ですよ、それ副業じゃないです」

 そう言って笑う彼につられて筆者も思わず笑ってしまった。まったくその通りで、これまで多くのフードデリバリーを取材してきたが、副業稼働ならあくまでギグワーク、わずかな時間で300万円稼げるなら専業でしたほうがいい。

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