終わってみれば中井にとって代表作となったわけだが、当時は心身ともに疲弊していたという。
「降板理由は定かではありませんが、当時、関係者の間では“信玄役を巡ってNHKと松平さんの間でトラブルがあった”という情報もあり、まったく穏やかな状況ではなかった。それを最も肌身で感じていたのが中井さん。以降、2人がメディアで絡むこともほとんどなかったため、共演NG説がまことしやかに流れたのです。
何の因果か2017年に松平さんが信玄役を演じたとき、“誰を参考にした?”と聞かれ、“勝新太郎先生です”と答えたのには苦笑いするNHK関係者は少なくなかった。勝新さんは、黒澤明監督の映画『影武者』(1980年)で信玄役に起用されながら突然降板した人。これは松平さんなりの“ブラックジョーク”なのでは……と」(前出・2人をよく知る芸能関係者)
実は中井と松平は、2005年放送の大河ドラマ『義経』で共演している。中井が義経の兄の頼朝役で、松平が義経の用心棒・弁慶役だった。だが、「同じ場面での撮影はほとんどありませんでした。撮影中、松平さんは主演の滝沢秀明さんとよく食事に行っていたようですが、中井さんとは一度もなかったそうです」(NHK関係者)という。
信玄役の“ドタキャン”騒動から今年で35年目、看護師と病院の院長を演じる2人が、正式に共演を果たすこととなる。“共演NG”はいかにして終わりを迎えたのだろうか。
松平さんのことは尊敬もしている
中井は1982年に時代劇『立花登 青春手控え』(NHK)でテレビドラマ初出演にして初主演した。翌1983年に『ふぞろいの林檎たち』(TBS系)に主演し、瞬く間に人気俳優となった。大河ドラマでの主演はその5年後のことだ。以降ドラマや映画で主演を務め続ける。
「中井さんの魅力は、コメディー映画『記憶にございません!』の総理大臣役から、『華麗なる一族』(WOWOW)の財閥一家に生まれた銀行頭取の役まで、演技の幅が広いことです。日本アカデミー賞をはじめとした数々の受賞歴がその実力を裏付けています」(映画関係者)