〈食用目的で飼育される犬は計52万1121匹〉──8月9日、韓国の全国紙・中央日報は、〈犬肉の悲劇〉と題してこんな記事を掲載した。
韓国の「犬食用問題の議論のための委員会」が調査したところ、国内で食用犬を飼育する農場は計1156か所、犬肉を売る飲食店は計1666か所、屠畜の上で消費される犬は年間約38万8000匹に上ったという。
昨今、韓国では犬食に関する議論が過熱していると在韓ジャーナリストは語る。
「きっかけとなったのは、尹錫悦大統領夫人の金建希氏(49)の発言です。6月にメディアで『経済規模がある国のうち犬を食べるのは韓国と中国だけ』と話し、犬食文化の廃止を提言しました。
金氏は“美人すぎる大統領夫人”として、国内でファンクラブ会員が10万人近い人気者。彼女の発言を受けて、犬食を法規制する声が噴出したのです」
尹大統領夫婦は愛犬家として知られ、現在4匹の犬を飼っており、ファンクラブには大統領執務室で犬と戯れる金氏の写真も掲載された。
実際に犬食反対派は日増しに増えており、京畿道が道民1000人を対象に調査したところ、「今後犬肉を食べるつもりはない」と回答した人は84%にも上った。
一方、議論の盛り上がりで反対派の矛盾も浮かびあがっているという。
前出の在韓ジャーナリストが語る。
「3月の大統領選で、尹氏と大接戦を展開した『共に民主党』の李在明候補は選挙期間中、犬食の法規制を公約として掲げました。このとき、尹氏の支持者の多くは『個人の食の好みや権利に国家が介入するな』と猛反対したんです。金夫人が犬食禁止を提言すると途端に乗っかるのであれば、信念のない主張だと言われても仕方ない」
それだけ大統領夫人の影響力は大きいということか。
※週刊ポスト2022年9月2日号