最後のステージを迎える
「でも、大役をいただいて大きく変わりました。私は現役時代に痛めた両膝に爆弾を抱えていて、“ダメならギブアップしてもいいですから”と言われていた。それでも健介と息子たち、何か月もともに練習してきたスタッフのかたたちみんなに“『サライ』を聴かせたい”という思いだけでがんばれた。
家族にとっても4人で同じ夢に向かって一丸となる経験は初めてのことでしたので、いまでも『サライ』を聴くと胸が熱くなります」
家のリビングには家族4人が揃ってゴールしたときの写真や子供たちが被っていた帽子、メインパーソナリティーを務めていた嵐のメンバーらのメッセージが書かれた黄色いタスキなどが大切に額縁に収められ、飾られている。
「その後、がんで闘病をしましたし、膝の手術もしました。子供たちにもいろいろな悩みがあったと思いますが、『サライ』を聴くとがんばれるというより、“何かを成し遂げた後にはゴールが待っている”と思わせてくれる曲なんです。ちなみに健介は普段全然歌わないんですが、加山さんの曲だけは歌います。『サライ』じゃなくて『君といつまでも』なんですけど(笑い)」
徳光和夫(81才)は2011年、番組史上最高齢の70才でチャリティーランナーを務めた。
「司会のときは『サライ』を聴きながら、走っているランナーの様子をどう伝えるかが見せ場でした。でも自分が走ったときは、それどころじゃございません(笑い)。あのときだけはまったく『サライ』が聞こえてこなかった。ただ、武道館にたどり着いてゴールし、ようやく『サライ』の大合唱が聞こえてきたときは、体が震えるほどの感動でした。これは味わった者でなければ決して感じ得ないものだと思います」(徳光)
その名曲をステージで熱唱し続けてきた加山だが、2019年に軽度の脳梗塞で入院、2020年には小脳出血で救急搬送された。しかし、歌への思いは強く、昨年は、AI技術による「バーチャル若大将」として『24時間テレビ』に登場し、生歌唱も披露した。そして懸命のリハビリ生活を続け、いよいよ最後の『サライ』歌唱を迎える。谷村が本番を前に、こう話した。
「実は加山さんに、一度お見舞いの電話をしたことがあるんです。いろんなリハビリをされている最中で、“加山さん、調子はどうですか?”って聞いたら、加山さんらしい言い回しで“谷村と一緒にサライを歌いてぇなぁー”とおっしゃって、胸が熱くなりました」
加山はどんな感動の“ゴール”を見せてくれるだろうか。
※女性セブン2022年9月8日号