薬の副作用「逆引きリスト」
「胃腸がキリキリと痛かったのですが、ずっとがまんしていました。そのうち便に血が混じるようになり、怖くなって病院に行くと、胃潰瘍を起こしていることがわかったのです。
頭痛持ちの私は、急な痛みが怖いので、予防で市販の頭痛薬を常用していたのですが、薬の副作用で潰瘍が起き、血便につながった可能性が高いとのことでした」
銀座薬局代表で薬剤師の長澤育弘さんが解説する。
「ロキソプロフェンナトリウムをはじめとする『NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)』は、多くの市販の解熱鎮痛剤が該当します。これらは痛みの原因となる『プロスタグランジン』の働きを抑えて症状を緩和しますが、『プロスタグランジン』には胃の粘膜を守る働きもあり、薬によってその作用も同時に抑制してしまう。それにより胃腸障害を起こし、ひどければ胃潰瘍や十二指腸潰瘍になって、便に血が混じることもあるのです」
頭痛や生理痛で気軽にのむ鎮痛剤だが、腹痛が続いていたのであれば慎重になるべきだろう。しかし、痛くないからといって、副作用を甘くみるべきではない。
異常に喉が渇けば最悪、失明も
今年7月、リウマチの治療を始めた福岡県の田畑照美さん(52才・仮名)はステロイドを服用し始めた。すると、無性に喉が渇くようになった。夏の暑さのせいかと思ったが、水分をいくら摂っても喉が渇く。自分でも異常だとはっきりわかるほどだった。
これも薬の副作用の可能性があると長澤さんが指摘する。
「ステロイドにより、糖を合成する働きが高まるため血糖値が上がり、糖尿病のような症状が表れることがあります。ひどくなれば、高血糖で失明や足が壊死するなどもありえます」(長澤さん・以下同)
ステロイドが原因で糖尿病のような症状が出るケースは珍しくなく、一度かかると再発しやすいという。食事の管理などには充分気をつけたい。
静岡県の江藤恵さん(61才・仮名)は高血圧の治療で利尿剤をのんでいたところ、1日に何度も足がつるようになった。何度も立ち止まってしまうので、外に買い物に行くのも怖くなった。
「大量の尿を薬で出すと体内のナトリウムやカリウムのバランスが変わる。電解質異常という状態に陥り、足がつる人もいます。
高血圧や心不全の治療薬として使われるループ利尿剤は大量の尿が出てむくみがとれますが、頭がふらつき、転倒や骨折のリスクもあります」
他人には言いにくい症状も、薬の副作用である可能性があるようだ。一石さんが言う。
「下痢が止まらないと駆け込んできた60代の女性がいました。整腸剤や下痢止めをのんでもなかなか改善せず、繰り返し再発していたとのこと。ところが大腸内視鏡検査でも異常はなかったのです」
よくよく話を聞くと、この女性は腰痛で整形外科に通っていることがわかった。
「腰痛に対して痛み止めと一緒に胃を保護するためのプロトンポンプ阻害薬(PPI)が処方されていたのです。女性は整形外科と内科は関連がないと思い込んで、申告しなかったようですが、PPIは膠原線維性大腸炎というやっかいな症状を引き起こすことが報告されています。こちらもPPIの服用中止を指示したところ、2週間後にはすべての症状がなくなりました」(一石さん)
この患者もお薬手帳を持っていたが、病院ごとに別のものを使用していたという。