ライフ

撮り鉄と地元住民はwin-winの関係を築けるのか 島根・津和野町が試みた共存策

1979年、復活運行したSL「やまぐち号」をカメラ片手に撮りまくる鉄道ファン(時事通信フォト)

1979年、復活運行したSL「やまぐち号」をカメラ片手に撮りまくる鉄道ファン(時事通信フォト)

 最近は何かとトラブルが目立つ鉄道の撮影ファン、いわゆる撮り鉄対策としては、立ち入り禁止にしたり、記念走行の告知をしないなど、彼らが集まらないようにすることが多い。それに対し山陰の小京都として知られる城下町の津和野町では、JR山口線を走る「SLやまぐち号」目当てに集まる撮り鉄のために、今の世の中の、とくにネットで大勢を占めるのとは逆の対応を始めた。ライターの小川裕夫氏が、撮影スポットを整備し無料開放している津和野町の取り組みについてレポートする。

 * * *
 国鉄は高度経済成長期前後から動力近代化を進めた。動力近代化とは、石炭を燃料とする蒸気機関車(SL)から軽油を燃料とする気動車・ディーゼル機関車(DL)、もしくは電気で走る電車・電気機関車(EL)へと置き換えた一連の取り組みを指す。

 動力近代化を推進した結果、各地の路線からSLは姿を消していった。現在、SLは主に観光列車として運行される。例えば、東武鉄道は2017年に“SL大樹”を運転開始。大井川鉄道では、“きかんしゃトーマス”を再現したSLが走っている。これらが沿線への誘客効果を狙っていることは言うまでもない。

 山口県山口市の新山口駅と島根県津和野町の津和野駅とを結ぶ山口線は、山陽と山陰を結ぶ役割を担っている。

 山陽と山陰を結ぶ重要な路線だが、利用者は決して多くない。そうしたことから、国鉄時代から需要の掘り起こしが課題になっていた。

 国鉄は各地から姿を消していったSLを、山口線で運行することで誘客を図ろうとした。山口線は東京から遠く、一般的に山口線へと足を運ぶには東海道・山陽新幹線を使って小郡(現・新山口)駅まで移動しなければならなかった。それだけに、山口線にSLを走らせれば、多くの誘客が見込めるほか売上的な面でも大きい。山口線はSLによる需要創出のパイオニアともいえる路線だった。

 こうして1979年に山口線で“SLやまぐち号”の運転が開始される。当時、動力近代化によって全国からSLは姿を消していたものの、まだ懐かしいと思われるほど歳月は経っていない。それでも、瞬く間に“SLやまぐち号”は人気を呼び、元鉄道少年・鉄道少年たちを魅了した。

関連記事

トピックス

6月6日から公開されている映画『国宝』(インスタグラムより)
【吉沢亮の演技が絶賛】歌舞伎映画『国宝』はなぜ東宝の配給なのか 松竹は「回答する立場にはございません」としつつ、「盛況となりますよう期待しております」と異例の回答
NEWSポストセブン
さいたま市大宮区のマンション内で人骨が見つかった
《さいたま市頭蓋骨殺人》「マンションに警官や鑑識が出入りして…」頭蓋骨7年間保管の齋藤純容疑者の自宅で起きた“ある異変”「遺体を捨てたゴミ捨て場はすごく目立つ場所」
NEWSポストセブン
大谷翔平の投手復帰が待ち望まれている状況だが…
大谷翔平「二刀流復活でもドジャースV逸」の悲劇を防ぐカギは“7月末トレード” 最悪のシナリオは「中途半端な形で二刀流本格復活」
週刊ポスト
フランスが誇る国民的俳優だったジェラール・ドパルデュー被告(EPA=時事)
「おい、俺の大きな日傘に触ってみろ」仏・国民的俳優ジェラール・ドパルデュー被告の“卑猥な言葉、痴漢、強姦…”を女性20人以上が告発《裁判で禁錮1年6か月の判決》
NEWSポストセブン
ホームランを放った後に、“デコルテポーズ”をキメる大谷(写真/AFLO)
《ベンチでおもむろにパシャパシャ》大谷翔平が試合中に使う美容液は1本1万7000円 パフォーマンス向上のために始めた肌ケア…今ではきめ細かい美肌が代名詞に
女性セブン
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
告発文に掲載されていたBさんの写真。はだけた胸元には社員証がはっきりと写っていた
「深夜に観光名所で露出…」地方メディアを揺るがす「幹部のわいせつ告発文」騒動、当事者はすでに退職 直撃に明かした“事情”
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
「生肉からの混入はあり得ないとの回答を得た」“ウジ虫混入ラーメン”騒動、来来亭が調査結果を公表…虫の特定には至らず
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン