水溶性食物繊維の「発酵力」がスゴイ!
水溶性食物繊維にはもう1つ「発酵性」という特徴がある。文字通り、腸内で発酵し、人体に有用な代謝物をつくる作用だ。腸内で血糖の代謝を改善する短鎖脂肪酸がつくられるのも、発酵性食物繊維によるものだという。みなと芝クリニック院長の川本徹さんが指摘する。
「食物繊維が発酵して短鎖脂肪酸がつくられると、免疫力が上がって、アレルギーやアトピー性皮膚炎、がんなどの予防に役立ちます。また、不溶性食物繊維の作用とは別に、ぜん動運動を促して便通がよくなり、代謝が上がって太りにくくなる効果も期待できます。そのほか、脂肪と糖の代謝が上がることで、糖尿病や脂質異常症といった生活習慣病の予防にも役立ちます」(川本さん・以下同)
近年の研究では、腸内で短鎖脂肪酸がつくられることで、“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンが腸内でつくられ、うつや認知症の改善にもつながるという報告がある。
「発酵性食物繊維はほぼ、水溶性食物繊維と同義です。海藻類のほか、オクラやモロヘイヤ、山いも、なめこなど、ネバネバ系の食材に含まれる食物繊維は、特に発酵性が高いと考えていい。きのこ類や大麦に多いβ-グルカンはゆっくりと発酵するため、大腸の真ん中あたりや出口付近で短鎖脂肪酸がつくられます。一方、菊いもやごぼうに豊富なイヌリンは水溶性食物繊維の中でも発酵が早いため、やや即効性があるといえるでしょう」
はちみつに含まれるオリゴ糖、りんごやバナナ、トマトなどに多いペクチンなども発酵性(≒水溶性)食物繊維の一種だ。
善玉菌の力を引き出す“シン・食物繊維”
腸にいい食べ物といえば、真っ先に思いつくのがヨーグルト。乳酸菌やビフィズス菌といった善玉菌を直接摂取することで、腸内環境の改善をねらう「プロバイオティクス」食品だ。一方、善玉菌のえさになる食物繊維を摂取することは「プレバイオティクス」という。より効率的に腸を整えるには、プロバイオティクス(菌)とプレバイオティクス(えさ)の両方を同時に摂取する「シンバイオティクス」が有効だ。
「善玉菌と食物繊維を両方摂取できれば、組み合わせは何でもいい。なじみ深いのはバナナヨーグルトやアロエヨーグルト、なめこのみそ汁、オクラ納豆など。
水溶性食物繊維はゆっくりと発酵します。これらのメニューを朝食で摂ると『セカンドミール効果』といって、昼食以降も血糖値の上昇をゆるやかにする作用があり、おすすめです。また、えびやかになどの甲殻類の殻に含まれる『キチン』、てんさいやビーツの『ラフィノース』といったオリゴ糖の一種も、食物繊維と似た働きをして善玉菌のえさ、すなわちプレバイオティクスになります」