知られざる素顔は
山井氏の本棚(本人のインスタグラムより)
一方、経営や人柄とは別のところで“異端視”されたこともあった。
「入社間もない頃は、インスタグラムやフェイスブックなどに、かなりアバンギャルドな写真を多数アップしていました。シュールレアリズムに傾倒していたようですし、本棚にはマルキ・ド・サドの『悪徳の栄え』なんかも並んでいました。デザイナーとしても”尖っていた”部分が伝わってきます。
新潟と東京の二拠点生活を続けながら、仕事とキャンプの合間をぬうように音楽フェスやDJイベント、アンダーグランド演劇などを鑑賞しに足繁く通っているようでした。腕などにタトゥーを彫り入れていますが、代表取締役に就任した当時、ネット上で問題視する声もあがっていました」(前出・会社関係者)
異端視されたことや“タトゥー炎上”騒ぎについては、山井氏本人も著書『経営は、焚き火のように Snow Peak飛躍の源泉』(日経BP)の中で言及している。
〈東証一部上場企業の社長として、私はかなり異端の存在です。就任当時は最年少記録となる32歳で、しかも女性。経営を学んだこともありません。そして、タトゥーが入っている……。色々話題になるかもとは思いつつも、正直、就任しただけでネット炎上するとは思っていませんでした〉
と、炎上騒ぎに驚いた過去を振り返るとともに、
〈私は、スノーピークを「世界で一番クリエイティブな会社にしたい」と思っています。理想は、「何か」をしでかす写真が続々と出てくること。まだまだ想像の範囲内なので、いい意味で期待を裏切ってほしいのです〉
会社を牽引するために、自身を“ネタ”にしようとも、さらに前に進もうとする熱い思いを語っていた。そして、そんな山井氏の強い個性を、父・太氏は高く評価していた。
「太さんが経営者にとって最も重要視していたのは、『未来を創造する』能力。それは太さん自身が持つ能力でもありますが、その能力をスノーピークの中で一番持っているのが梨沙さんだと話していました」(前出・会社関係者)
山井氏の著書では、父・太氏が自身の後継者に娘を選んだ理由についてのコメントも記載されている。
〈人間を大きく2種類に分けると、「『これやって』と言ってもやらない人」と「『やらないで』と言ってもやっちゃう人」がいます。社長に向いているのは断然後者です。梨沙は子供の頃から「やるな」と言っても「やっちゃう子」でした。そんな人間でなければ新規事業は立ち上げられない〉
今後のさらなる活躍が期待されていた矢先の電撃辞任。「やっちゃう子」は、今後どのような道を歩むのだろうか。