ビジネス

「生つくね」が看板の名店『江戸政』が98年の歴史に幕、生肉提供へのSNS批判に店主が発した「声明文」

閉店した江戸政

閉店した江戸政

 東京・東日本橋にある焼き鳥の名店「江戸政」が急きょ閉店したことがわかった。江戸政は大正13年創業の老舗で、現在の店主は3代目。数々のメディアに取り上げられる人気店だった。平日17時オープンで売り切れ仕舞いのため1日数時間しか営業せず、一部では“幻の焼き鳥屋”と呼ばれていた。あまりに突然の閉店には近隣住民も困惑している様子だ。

「閉店しちゃったんですか? 普段なら午前中から仕込みをしているはずなのに今日は全然気配がなく、昨日も営業していなかったので、どうしたんだろうとは思っていました。いつもは開店1時間前からお客さんが並んでいますよ」(近隣住民)

 江戸政の名物メニューは、鳥のタタキを団子状に丸めた「生つくね」。これを目当てに店に足を運ぶファンが大勢いた。そのひとりが、生つくねの思い出を振り返る。

「つくねは生か焼きを選べるのですが、やっぱり江戸政といえば生つくね! せっかく江戸政に来たからには生つくねを食べなきゃもったいないと考える客がほとんどだったと思いますよ。鮮やかなピンク色で、まるでネギトロのような見た目をしていました。新鮮な鶏肉のタタキに甘辛いタレが絡まり、日本酒が進む“罪の味”です。ちなみに、お店にくる地元の子どもたちには、一口サイズでよく焼いて提供していたようですね。

 それから、すぐ食べるのであれば、生つくねはテイクアウト可能でした。自宅が少し離れているので断念しましたが、あの生つくねで自宅でゆっくり晩酌を楽しめたなら最高だろうなぁ……」(店のファン)

生つくね(Googleマップより)

生つくね(Googleマップより)

 しかし、生つくねに対して、ネット上で〈食中毒の危険があるのではないか〉という批判が殺到。江戸政は9月20日、〈SNSによる江戸政の商品に対する数多くのご意見に、店主としても納得が出来きる部分はありました。食中毒を出した事はありませんでしたが、それはただの結果論だと深く受け止めています〉(原文ママ、以下同)とGoogle マップの店舗情報に記載する形でコメント。〈食の安全と飲食店への信頼を脅かす営業をしていたことに責任をとり本日にて両国橋際江戸政を閉店することを決断しました。SNSの内容を重く受けめ、騒動の発端への責任をとるためにも閉店します〉と同日をもって閉店することを発表した。

 この発表を受けて、〈“正義厨(正論を振りかざす人間を揶揄するネットスラング)”のせいで名店が潰された〉と店側に同情する声も上がっている。しかし、もちろん鶏肉の生食は危険が伴う行為だ。東京都福祉保健局の担当者が解説する。

「加熱不足の鶏肉料理を喫食すると、カンピロバクター食中毒になる危険性があります。手足のマヒや顔面神経マヒ、呼吸困難などを引き起こすギラン・バレー症候群を発症する場合もあります。お肉を安全に食べたいのであれば、“十分加熱したものを食べる”以外の対策はありません」(東京都福祉保健局の担当者)

 江戸政にも何度か電話をかけたが、繋がらなかった。前出の店のファンは閉店を惜しみつつ、このように語る。

「常連だけが知っている裏メニューというわけではなく、生つくねは誰でも注文できましたし、SNSにも写真がバンバン投稿されていました。炎上は時間の問題だったのかもしれません。『生つくねをメニューから廃止して、店の営業自体は続けたら?』とは思わなくもないですが、すっぱり閉店を選んだのは店主なりの美学だったのでしょう」(前出・店のファン)

 肉の生食に“絶対安全”は存在しない。

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン