「入札は考えていなかった」
それというのも、取材班が政府調達の公開資料などをもとに、〈皇族、内閣総理大臣、衆・参両院議長及び最高裁判所長官の全て又はこれと同等の出席があった式典等(要人等を含む1,000人以上が出席)〉という条件に該当すると思われる式典と受注企業を過去5年間さかのぼって調査したところ、該当する式典は、毎年3月に行なわれる「東日本大震災追悼式」をはじめ、安倍内閣時代の5回の「桜を見る会」、2018年3月の「自治体消防制度70周年記念式典」、2019年11月の「大嘗宮の儀」、2020年11月の「立皇嗣の礼」、毎年8月15日に行なわれる「全国戦没者追悼式」など29件あり、そのうち入札の記録が残っているのが23件あった。
その受注企業を見ると、今年5月に那覇市で行なわれた「沖縄復帰50周年記念式典」に係る企画・演出、運営及び警備を電通沖縄が受注していた以外、ほとんど「ムラヤマ」が受注していたからである(「会場借り上げ」を受注したホテルや、式典の一部の設置作業や撤去のみを受注した企業を除く)。
ちなみに、国葬の入札後の今年9月5日に天皇、皇后の臨席で行なわれた文科省主催の「学制150年記念式典」の会場運営業務はムラヤマではなく、大手警備保障会社セコムの子会社「セコムジャステック」が受注しているが、同社は国葬の入札には参加していない。親会社セコムのコーポレート広報部がその理由をこう説明する。
「改めて国葬儀の資料など確認したところ、企画・運営の比重も多く、セコムジャスティックは基本、常駐警備の会社なのでそこまでのノウハウがありません。そうしたことから、入札することは考えていませんでした」
安倍氏国葬の入札条件に、過去5年間に国家的式典の企画・演出を手がけた実績を示す「履行体制証明書」の提出と審査が盛り込まれたことが、手続き上は一般競争入札でも、当局が最初からムラヤマに受注させることを考えていた”出来レース”の証拠と言えるのではないか。
内閣府故安倍晋三国葬儀事務局にこの問題について問い合わせたが、締め切りまでに回答はなかった。