ライフ

【正しいがん予防】女性のがんの3大要因は「感染」「喫煙」「飲酒」

がん治療の最新事情

がん治療の最新事情

「たばこで肺がんに」「肉ばかり食べると大腸がんになる」「きのこでがんが予防できる」──2人に1人が罹患する国民病であるだけに、そうした「がん予防」の情報はこれまでも数多く喧伝されてきたが、その精度や信憑性はうやむやだった。米ハーバード大学公衆衛生大学院で疫学・予防医学の道を究め、愛知県がんセンター研究所や東大大学院医学系研究科特任教授などを経て、2021年9月から国立がん研究センターがん対策研究所予防研究部部長を務める井上真奈美さんが、正しいがん予防をお伝えする。【全3回の第1回】

 * * *
「昔から公衆衛生や国際保健に興味があって、高校生の頃は海外で安全な井戸を掘る仕事に就こうかと真剣に考えていたくらい。集団の健康状態や生活状況を分析して、改善の方法を見つけることに強い魅力を感じるんです。

 だからいまの職業は、仕事というよりも使命に近い。1人でも多く、がんにかかる人を減らせたらと思っています」

 そう話すのは国立がん研究センターがん対策研究所予防研究部部長の井上真奈美さん。

 1962年の設立以来、日本におけるがん征圧の中核拠点として診療から技術開発までを一手に担ってきた国立がん研究センターが注力している分野の1つが予防研究だ。

 そのトップとしてチームを率いる井上さんは1990年に筑波大学医学専門学群を卒業後、米ハーバード大学公衆衛生大学院に留学。疫学・予防医学の道を究め、愛知県がんセンター研究所や東大大学院医学系研究科特任教授などを経て、2021年9月、現職に就任した。

「私が医学部を卒業して働き始めた約30年前を振り返ると、社会において女性をとりまく環境が大きく変化していることを肌で感じます。当時、医学部を卒業する女性の比率は全体の2~3割で、医師全体で見ると、女性医師は1割程度でした。医師は全員男性と思い込んでいる患者さんから『お医者さんはいないのか?』と聞かれたことは何度もありましたし、長時間預かってくれたり、急な依頼でも融通の利く託児所の情報を女医同士で共有したりしていました。その頃と比較すれば、現在は社会の意識も変わり、男女ともに仕事も育児も両方とも当たり前のこととして行えるような環境が整いつつあると感じます。

 しかし一方で日本人女性のがん検診受診率は世界的に見ても極めて低く、乳がんの罹患率も年を追うごとに高まっているという現実がある。自身の健康をないがしろにしている女性が多いのは、大きな問題だと感じます」(井上さん・以下同)

 予防研究部では、住民健診受診者、がん患者など、さまざまな集団からの研究結果を収集し、生活習慣や行動様式とがんの関連性を総合的に評価して「日本人のためのがんの予防法」を提言している。

 日本人のがんの4割は、これまでがんの要因として知られてきたリスクを避けることで予防できる―大規模な調査と徹底した分析のもと、井上さんら研究チームが出したのはこんな結論だった。

「確かに、医療技術の向上により、がんは“不治の病”ではなくなりました。しかし、治療には身体的にも経済的にも負担がかかるうえ、再発もありえます。やはりそのような負担がかからないに越したことはない。科学的根拠に基づいたがん予防法を身につけることは、人生100年時代において、がんはもちろん、ほかの病気の予防にもつながります。健康寿命を延伸するうえでも大きな意味があるといえます」

関連キーワード

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン